内田 茂 元自民党都連幹事長
「お前らは、小池の怖さをわかっていない。これで東京の自民党は全滅だ」
『週刊文春』 10月12日号
希望の党旋風が吹き荒れている衆院選だが、自民党内では選挙情勢について楽観する見方も出ている(産経新聞 10月4日)。希望の党に続いて立憲民主党も発足しており、自民批判票が分散されるからだ。
しかし、10月2日午後、自民党が行っている全国47都道府県の選挙区、比例区の情勢調査で「自民党単独100議席前後減の可能性濃厚」という数字が浮上し、官邸と党内に衝撃が走った(AERA dot. 10月3日)。『週刊文春』での「全選挙区完全予測」では、自民党は74議席減の214議席で単独過半数割れという数字が出ている(10月12日号)。
政治評論家の小林吉弥氏は「単独過半数割れなら、10月22日の投開票日に一気に退陣論が浮上してくる」と予測。また、「100議席減」となると200議席を切ることになるが、政治ジャーナリストの山村明義氏は「200議席を切るような大負けとなれば、どんな事情があるにしろ、即退陣となるでしょう」と語っている(『週刊新潮』10月12日号)。
リアリティがあるのが“都議会のドン”こと内田茂元自民党都連幹事長の言葉だ。小池氏に一貫して批判されてきた内田氏は、小池氏によって引退に追い込まれたと言っても過言ではない。内田氏は周囲の楽観論に対して「小池の怖さ」を説いたという。
安倍首相自身も「自民はかなりの議席を落とすけど、奇策は使わずに落ち着いてやっていくしかない」(『週刊文春』10月12日号)と語っているそうだが、そもそも臨時国会冒頭での衆院解散という「奇策」を使ったのは自分自身だ。多少の負けは覚悟している様子だが、自身が退陣に追い込まれるような決定的な負けは絶対に避けたいはず。自民党内では「真珠湾奇襲だったつもりが、これではミッドウェーの地獄だ」という声も囁かれているらしい(『週刊新潮』10月12日号)。
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安倍昭恵 首相夫人
「総理総裁にふさわしい票を出していただき、もう一度主人に大きな仕事をさせてください」
産経WEST 10月6日
安倍首相の地元、山口県下関市での事務所開きに登場した安倍昭恵首相夫人。選挙区内を駆け回って「主人をお願いします」と訴えているのだとか。ある自民党ベテラン議員は「森友、加計疑惑のイメージがこびりついた安倍さんでは駄目だ」と語ったというが(AERA dot. 10月3日)、昭恵夫人が森友問題について自身の口で説明すれば、自民党はもっと楽に勝てるのではないだろうか?
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枝野幸男 立憲民主党代表
「富める者、強い者を強くすることで社会全体を引き上げるという『上からの政治』ではなく、厳しい環境にある人を、苦しんでいる人を、社会を下から支えて押し上げる」
産経ニュース 10月4日
10月2日、民進党の枝野幸男代表代行は、希望の党に合流しないリベラル派による新党「立憲民主党」を立ち上げることを正式に表明した。新党結成について「1週間前は全く考えていなかった」と述べた枝野氏だが、「枝野立て」の声に押されて決断に至ったという。さいたま市での街頭演説では「安倍政権のもとで民主主義は明らかに壊されている」と述べ、安倍政権継続阻止に全力を注ぐことを宣言した(NHK NEWS WEB 10月3日)。
「立憲民主党」という党名を見て、「立憲って、新憲法作るのか」などと言っている人もいるが、党名のもとになっている「立憲主義」とは「法の支配に類似した意味を持ち、およそ権力保持者の恣意によってではなく、法に従って権力が行使されるべきであるという政治原則」(ブリタニカ国際大百科事典)である。「立憲主義に立脚する民主制が立憲民主制」だ。中学の公民の授業で習う内容である。
なお、安倍首相は2014年2月3日の衆院予算委員会で「憲法について、考え方の一つとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方はありますが、しかし、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、今まさに憲法というのは、日本という国の形、そして理想と未来を語るものではないか」と発言し、「立憲主義の否定」と批判を浴びている。
希望の党に「排除」された人たちの寄せ集めとも見られる立憲民主党だが、期待する人は少なくない。ツイッターのフォロワー数は結党宣言から2日あまりで12万2000となり、日本の政党の中で首位に立った(朝日新聞デジタル 10月5日)。なお、希望の党のフォロワー数は約4000。なるほど、小池氏が「選挙はテレビがやってくれるのよ」と言う意味がよくわかる。
枝野氏の記者会見を見た映画監督の是枝裕和氏は、次のようにツイートしている。「リベラルだろうが保守だろうが、目の前の記者の質問にきちんと誠実に向き合い、その背後に有権者がいるのだという認識を持って話す政治家の姿に感動している自分がいるのだが、それはこの数年、そのような当たり前の姿を少なくとも僕は全く見ていなかったのだということに改めて気付き愕然としている」(10月3日)。
希望の党が押しきるのか、自民党が守りきるのか、立憲民主党が一矢報いるのか。公示は間もなく。