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数千万円のレアカードに賞金総額は約11億円…「紙の麻薬」として一世を風靡した「マジック:ザ・ギャザリング」の現在

数千万円のレアカードに賞金総額は約11億円…「紙の麻薬」として一世を風靡した「マジック:ザ・ギャザリング」の現在

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そんな「マジック」がアプリに

 その「マジック」がスマホで遊べると知ると、驚く人もいるかもしれない。

「eスポーツ」の認知も進んでいる昨今、競技性の高い対戦ゲームはたくさんあるが、そのジャンルのひとつに「デジタルカードゲーム」がある。日本では「シャドウバース」、世界的には「ハースストーン」というタイトルが人気だ。

 デジタルカードゲームでは、実物の机の上でカードを並べて遊ぶのではなく、パソコンやスマホを通じて、遠隔地にいる対戦相手とプレイする。要するに、TCGを再現したオンラインゲームなのである。

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「マジック」のデジタル化は古くから行われているが、最新のものが「Magic: The Gathering Arena」(以下「MTGアリーナ」)だ。Windows向けとしては2019年、Mac向けとしては2020年に正式サービスを開始、すでに多くのプレイヤーが対戦を楽しんでいる。

 この「MTGアリーナ」のスマホ版が、つい最近の3月25日にリリースされた(iOS/Android対応)。いよいよ「マジック」が、「シャドウバース」や「ハースストーン」同様、スマホで手軽に遊べるようになったのである。

それぞれのクリーチャーが複雑な能力を持っているが、盤面の表示では省略される。詳細はタップして確認する。

“紙の麻薬”は電子でも麻薬だった

 その中毒性はデジタル版でも健在だ。しかも「MTGアリーナ」では、対戦してくれる友だちを探す必要がないうえ、遊べば遊ぶほど報奨がもらえる(ゲーム内通貨など)。徹夜で遊べる危険なゲームとして完成しているのだ。

 そんな「MTGアリーナ」の魅力について、若いゲーマーに訊くと。

「他のデジタルカードゲームだと、新しいカードを強く設定する『インフレ』が激しいですが、『マジック』のインフレはそこまで激しくない感じがします。歴史が長いからでしょうか」(20代・学生)

画面が狭いのが最大の難点かも

「MTGアリーナ」は無料でスタートできるが、手持ちのカードしか使えないため、実物の「マジック」同様に、パックを買い足して追加する必要がある。無課金のままプレイを続けることも可能だが、思い通りのデッキを使えるようになるのは、始めてからしばらく後になるだろう。

 また、収録セットも限られている。「呪われた巻物」や「マスティコア」といった懐かしいカードを使えないのはすこし寂しい。最新カードを知らないプレイヤーならば、最近のクリーチャーの強さに面食らうかもしれない。

 スマホ版には特有の問題点もある。「マジック」のカードは情報量が多いことで知られるが、画面には小さい文字で表示されるため、ゲームの状況を理解するのが難しいのである。あらかじめカードの効果をすべて覚えていれば支障はないが、最初は戸惑うだろう。

そもそもスマートフォンの画面サイズ自体がカード1枚と大差ないのだから、盤面をすべて詰め込もうとすれば見にくくなるのは当たり前だ。

 WindowsパソコンやMacが使える環境なら、大きな画面で遊ぶほうが快適なのは間違いない。またiPadのタッチパネルとは相性抜群なので、そちらで遊ぶのも良いだろう。

iPad版では画面も広々としており、タッチパネルなので遊びやすい。ただし手札の並べ替えができないなど、PC版に劣る部分もある。

一攫千金の夢、再び!?

 新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスは、TCG業界にも暗い影を落としている。直接対面してTCGを遊ぶ機会そのものが激減したし、TCGの大会会場は往々にして過密になりがちだ。

「マジック」においても、2020年の主要な大会はほとんどが「MTGアリーナ」上でのデジタル開催となった。「2020年シーズン・グランドファイナル」の優勝者であるアメリカの選手は、賞金の2万5000ドル(約275万円)を手にしている。なお、2019年に「MTGアリーナ」で払い出された賞金は総額11億円に達するという。

 世界の頭脳が争う「マジック」界で勝ち上がるのは簡単なことではないが、「MTGアリーナ」でマジックに再会した往年のプレイヤーが、大会を制覇してプロプレイヤーになるようなことがあるかもしれない。もちろん“気軽に遊べる”ゲームアプリでもあるので、そこまで気を入れずに楽しんでも結構だ。

数千万円のレアカードに賞金総額は約11億円…「紙の麻薬」として一世を風靡した「マジック:ザ・ギャザリング」の現在

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