ホビーとしてのカード集めの歴史は長い。プロ野球カードや仮面ライダーカード、ビックリマンシールなど、色とりどりの紙片はあらゆる時代の子どもたちを魅了してきた。1988年にカードダス(カード自販機)ができてからは、『ドラゴンボール』のシーンを描いたトレーディングカードが売れに売れた。

 そんなカード文化に「TCG(トレーディング・カードゲーム)」が加わったのが90年代中葉のことだ。今日でも「デュエル・マスターズ」や「遊☆戯☆王 OCG デュエルモンスターズ」が盛んに遊ばれているが、とりわけ30代・40代に支持者が多いのが、アメリカ生まれの元祖TCG「マジック:ザ・ギャザリング」(以下「マジック」)である。

28年の歴史を持つ「マジック」

 1993年にアメリカで発売された「マジック」はまたたく間に大人気となり、94年に日本上陸。まずはTRPG(テーブルトークRPG)を遊んでいた層に受け入れられ、数年後には中高生の間でもブームとなった。

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 舞台はファンタジー世界の「ドミニア」(後に「多元宇宙」に改称)で、プレイヤーは魔法使いの役割を演じる。エルフやドラゴンなどのクリーチャー(魔法生物)を召喚したり、攻撃や妨害の呪文を駆使したりして、ライバルを倒すのがゲームの目的だ。

日本のトレカと比べても写実的な絵柄。コレクションしたくなる美麗なアートワークも「マジック」の魅力だった。

「マジック」には5つの色(属性)があり、「赤」は炎の攻撃呪文が使え、「青」には数々の妨害呪文があり、「緑」はクリーチャーが強い……といったような特徴がある。どの色のデッキを選ぶかに、プレイヤーの性格が現れていた。

「マジック」では、プレイヤーがあらかじめ集めたカードで「デッキ」を組んで戦うのだが、人気のカードは数千円したし、中には当時の値段で数十万円を超えるレアカードもあった。そんな「マジック」に全財産をつぎ込むプレイヤーも多く、ときに「カード破産」とも自嘲された。

「マジック」の世界で有名な高額カードに「ブラック・ロータス」がある。この価値は上がり続けており、今年1月にもネットオークションで一時は1億円の値段が付く(最終的には5000万円超で落札)など、さながらマネーゲームの様相を呈している。

 対戦型のTCGは今も人気だが、ここでは1人プレイの『ドラクエ』のように、誰でも“最強”になれるわけではない。だから「マジック」には、対戦格闘ゲームのような高い競技性があった。

 94年からは「マジック」の世界一を決める「世界選手権」が始まり、99年には日本のパシフィコ横浜が開催地に選ばれた。「マジック」大会の賞金で生活するプロは雑誌にも頻繁に登場。トッププロの年収は1000万円をゆうに超え、プレイヤーたちの憧れの的となった。