いまや「ない生活は考えられない」という人も多いLINE。その誕生のきっかけは、東日本大震災だった。相手がメッセージを読んだと分かるあの「既読」機能も、相手に返信する余裕がなくても既読と分かれば安心するから……とつけられたものだ。

 スマホを開いてLINEを確認する生活もこの10年で日常になった。もちろんそこには「件名」なんてものはない。LINEはチャット式の会話が続くからだ。

「Re: Re: Re: Re:」の時代

 一方でガラケー時代には、予定したデートがとっくに終わったにもかかわらず、「Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:今度の週末」のような件名のメールをやり取りすることがよくあった。

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スマホでLINEのやりとりをする毎日は当たり前になったが、あの頃はガラケーでメールを送っていた。今もその余波が残っている……? ©iStock.com

 ガラケーでなくとも、仕事で出会った相手から来た「ご挨拶」メールに「Re:」が重なることは今でもしばしば目撃される。実を言うと筆者にもその傾向があって、1か月以上にわたって同じツリーでメールのやり取りをしていることを「文春オンライン」の編集者にからかわれてしまった。こうしたクセも、元を辿ればあの頃から始まっているのかもしれない。

 この「Re:」はラテン語が由来とされ、「~への返信」という意味を持っている。もっとも意識的に「Re:」を入力するケースはごく稀で、メールソフトが自動的に追加する「Re:」の文言を放置し続けると、前述したような「Re:Re:Re:Re:」現象が起こるのである。

「Re:」が使われるのは主にメールとBBS(電子掲示板)だ。コミュニケーションの主役がLINEやSNSに移った現代からすると、随分前の話にも思えてくる。ちなみに、ロックバンドのASIAN KUNG-FU GENERATIONに「Re:Re:」という題の楽曲があるが、リリースは2004年である。

「PCのメール」から「携帯のメール」へ

 パソコンでの「電子メール」はそもそも、ユーザーがリアルタイムに応答するものと考えられてはいなかった。パソコンの入門書などでも、「書きたいときに書き、読みたいときに読む」「会話よりも手紙に近いもの」と説明されることが多かった。

「電子メール」はそもそもが「手紙」に近いものだった ©iStock.com

 帰宅後なり出勤後なりにメールソフトを立ち上げて、オフラインだった間に届いた「新着メール」をパソコンに受信する(これを「フェッチ」と呼ぶ)。通信時間に応じて料金が発生したナローバンド時代には、メールの送受信が済んだ時点でネット接続を切断するのが常套手段だった。読んだり書いたりする間は、オフラインでも構わないからだ。