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「生活保護受給者なのだからパチンコを打たねば」 生活保護元受給者が送った“薬物で空白に耐えた”日々

人生の再建を熟慮して出た結論は「自殺すべき」

2021/04/06

 生活保護の受給を決めてからは全てが迅速に動いた。役所窓口での水際作戦のことは知っていたので、福祉関連の仕事をしていた友人に申請に付き合ってもらった。彼の正確な知識と影響力により、おそらくかなり例外的なことに、ほとんど即日で保護の認可が降りた。

 家探しは難航した。いくつもの不動産屋を回るがすべての業者に断られる。「生活保護」という単語を出した途端に不動産仲介業者の顔がひきつり、ご紹介できる物件はありませんという丁重な返答が返ってくる。しかしそんな自分の隣のブースでは、年若いカップルが新居についてあれでもないこれでもないと幸福そうに語らっているのだ。そういう経験を幾度となく積んだ。

 最終的に、生活保護受給者向けの不動産会社と相談しアパートを借りた。そんな業者が存在するとネットを通じて知れたのは幸運だったのだろう。入居日が決まり、ささやかな引っ越しをした。荷物は布団一式と衣類が少々のみ。だから引っ越しはレンタカーで一往復するだけで済んだ。新しい生活が始まった。

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 自分がパチンコを10年ぶりに打ったのはそんな新しい生活が始まった直後だ。久しぶりに握るまとまった額の現金。それを見て「パチンコを打たなきゃな」と思った。

 受け取ったのは家賃補助を含めた13万円ほど。そこから事前に借りていた一時金の2万円を返却し残りは11万円。その11万円のうちの1万円をパチンコ台に滑り込ませ、数年ぶりのパチンコが始まった。

 玉が左から右に転がっていく。パチンコの還元率は6割だったか、7割だったか。そんなことを考えながら打った。台の中で「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターが目まぐるしく動いている。ここで大当たりしたら嫌だな、と思った。大当たりすれば、脳に「パチンコをやれば儲かる」という報酬系が形成されてしまう。それは数万円の勝ちでは到底埋め合わせることのできない損害だ。それでも1万円くらいは溶かすべきだと思った。そのくらい使わなければパチンコを打ったことにはならないだろう。

 幸いなことに、15分ほどで1万円分の玉は尽きた。そうして自傷行為は終わった。