アパートでの生活が始まった頃から、持病の内臓疾患が本格的に再燃し始めた。激痛と出血が続き、何もできない日々が続いた。発作がない日はひたすら寝ていた。寝る以外にどうしようもなかった。もはや自分には、何の仕事も、何の目標も、何の意味もないのだ。横になり、目をつぶり、ひたすら時間が過ぎていくのを待った。毎日がその繰り返しだった。
そのうち、薬物を覚えた。市販の咳止め薬をオーバードーズする。酩酊すると楽だった。何もない空白に耐え続ける日々に、薬物が酩酊の彩りを与えてくれた。酩酊の中ではいろいろなものに再び意味が与えられた。全て失ったと思っていたもの。無価値な自分。世界。酩酊しながら本を読み、映画を観た。久しぶりに心から楽しいと思える時間があった。
そうして、完全に薬物にハマっていった。朝起きて、無意味な世界と無価値な自分を発見すると、すぐさまクスリを飲んだ。そうして酩酊の中を漂った。自分を責め続ける内なる声は鳴り止み、世界に再び色彩が与えられる。そうやって本を読み、映画を観て、外を散歩し、食べたいものを食べた。こうなってしまう前の世界。空白ではない世界。色が付いている世界。クスリの力に頼らなければ、もう自分はその世界にアクセスできないのだ。だからクスリを飲んだ。飲み続けるしかなかった。
自分が依存症に両足を突っ込んでいることには、もちろん完璧に気づいていた。連続酩酊状態がおそらく何週間か続いたころ、このままではヤバいと考えた自分はクスリを断つことにした。薬物をやめ、今後について真剣に再考し、なんとか人生を立て直そう。そのようなことをおそらく酩酊中に思いついた自分は、残っていたクスリをトイレに流し、ノートとペンを引っ張り出して人生の再建計画に取り掛かった。
そして何日か熟慮した結果、今すぐ自殺すべきだという結論が導き出された。もう自分には何も残っていない。精神と肉体にそれぞれ障害を抱え、まともな学歴も職歴もなく、人並みのことは何もできない。世界にも自分にも絶望しきっている。そして極めつけは生活保護受給者だ。自殺する以外に方法はない。
自殺の準備を整え、踏ん切りをつけようと悪戦苦闘している間に、ふとまた手癖で咳止め薬にスリップしてしまった。また酩酊の日々が始まった。あと一歩のところまで来ていた死という救いは、そうして遠ざかっていった。