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要注意フレーズ(3)「ついて来れないヤツが悪い」「仕事は自分で覚えるもの」

 新人への教育やフォローをろくに行わず、自己責任を強調するのもブラック企業の特徴だ。

 仕事についていけず、体調を崩したり、上司に相談したりしても、「それは自分の責任」「気持ちの持ちようでなんとでもなる」と対処してもらえない。

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 体調不良で休みを取ろうとすると、「仕事ができない上に休むなんて、どれだけ迷惑をかければ気がすむの」と怒鳴られてしまった方もいる。保育士の方からの相談では、こんな相談があった。

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「残業はしちゃだめ」「日中は子どもに集中して」と言われ、事務仕事は休憩中にやるか、家に持ち帰るしかない。先輩に相談しても「慣れればできる」「あなたが未熟なだけ」と言われ、なんとか頑張り続けたが、体力的・精神的に追い詰められ、「介護・保育ユニオン」に相談に訪れたのである。

 会社には労働者の健康に配慮する義務があるし、労働者に過剰な負担を負わせて健康被害を生じさせた場合には会社に責任が生じる。仕事が要因となって身体を壊した場合には、労災保険から補償を受けられる可能性があるし、場合によっては会社に対して民事裁判で賠償を請求することもできる。

 ぜひ、このことは覚えておいてほしい。

要注意フレーズ(4)「友達とは会うな」

 もう一つ注意が必要なのが、いわゆる「ブラック研修」だ。入社した途端に、厳しい研修プログラムが課せられ、思考する余裕を奪い、会社の価値観を植え付ける。まるで「洗脳」ともいえるような研修を行う企業があるのだ。家族から次のような相談が寄せられることがある。

「研修のあと、子供の人格が豹変してしまった。家族にも会いに来なくなり、いつ連絡してもなかなかつながらない。煙たがられるようになってしまった」

 ブラック企業の「洗脳研修」の特徴を挙げてみよう。まず、「眠らせない」という点だ。早朝から深夜まで長時間のプログラムや課題を課し、睡眠を奪うことによって、正常な判断ができない状態にする。

 次に、「外部との連絡を遮断する」ことだ。研修では携帯電話を回収する企業もある。「友達とは会うな」と言われることもある。これは、外部との接触を断つことによって会社の論理や価値観を内面化させることを目的とする。

 その上で、研修では、叱責を繰り返し、反省を強要することによって、「徹底的な自己否定によりアイデンティティを破壊する」。こうした過程のなかで、個人のアイデンティティや価値観、延いては人権感覚や権利意識までもはく奪されてしまうのだ。

©iStock.com/文藝春秋