これぞまさに現代アート! 良きにつけ悪しきにつけ、そんな感慨に襲われてしまうのが、東京都現代美術館で開催中の「マーク・マンダース マーク・マンダースの不在」展。
独特な姿の彫像がずらり
会場に足を踏み入れると、そこには摩訶不思議な世界が広がっている。
まずは、異様なバランスでテーブルに足をかけている人物像が目に飛び込んできて、「これはいったい?」となる。
歩を進めると、ビニールに囲われた空間が出てくる。そろりそろりと入っていけば、中では激しくヒビ割れてところどころ欠けている巨大な頭部像に出くわした。
混乱しながらビニール空間から出ると、同じくらい巨大な人物の顔が、木材の間に挟み込まれ圧縮されている。痛々しくて、見ているこちらが辛くなってくる。
他にも、一見しただけではこれが何なのか見当もつかないオブジェなんかが並んでいて、「分かる・分からない」という基準に照らせば、まったく意味が分からないのである。
ただし。空間に身を置いているあいだじゅう、感情が激しく揺れ動かされるのはたしかだ。しかも次々と湧き上がってくる感情は、ここ以外ではちょっと味わったことのない種類のもの。
それでつい、「この体験はいったい何だったのか? もう一度最初からたどってみようか……」という気分にさせられてしまう。
知らず作品と空間が気になってしかたなくなっているのだ。それはすでに作者の術中にハマってしまったということなのかもしれない。