美術の世界には、「現代アート」と呼ばれるジャンルと作品群がある。
基本的には、最近つくられたものならば、現代アートだと言える。
世の中の「いま」の動向がすぐ反映されるのだから、ファッションやコンビニの陳列商品と同じように、現代アートにははっきりとした流行がある。
ではこのところ人気なのは? 映像と写真を用いた作品だ。
これは当然といえば当然。スマホの動画配信サービス、ネット記事、広告なんかを通して、私たちは日々膨大な映像と写真を目にしている。馴染みがあるどころではない。どっぷり浸って、中毒に陥っていると言ってもいいくらい。
そんな状況がアートにも反映されて、映像作品や写真作品が、山のように積み上がっていくわけだ。
1990年代から継続して作品を発表するアーティスト・オノデラユキも、つねに写真を使って表現をしてきた。
ただしその作風は、最先端の映像・写真の動きとはまったく無縁である。
では彼女が何をしているかといえば、
「写真ってそもそも何なのか」
「写真はどんなことができるのか」
といったことの探究だ。
19世紀に発明されて以来、そして近年とみに、写真というものがこれほど人を惹きつけるのはなぜだろう。かくも魅惑的な写真それ自体の正体が何なのかを、作品を通してずっと考えてきた。
フランスを拠点に活動しているオノデラがこのたび、東京で新作を発表することとなった。ギャラリーYumiko Chiba Associates viewing room shinjukuでの「TO Where」。
会場に身を置いているだけで、写真の物質性やイメージの在り処についてあれこれ考えさせられ、ふだんの写真との付き合い方を再考したくなる。
それってどういうことかといえば、たとえばあなたのスマホのアーカイブにある、カフェでスイーツを撮った写真。それは本当に実在するのか? それを食べた記憶さえ疑わしいのでは? と思わされてしまうのだ。