気分を入れ替えて、自分の内側に新鮮な空気を送り込みたい。そう思ったとき、訪れてみたい展覧会がこちら。
国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」。
迷い猫と「共同作業」したアート作品
現代アートを創り続けている、10人の作家によるグループ展だ。
絵画、写真、映像、作陶、空間全体を作品とみなすインスタレーション。表現のかたちは多種多様。会場を巡っていると、いろんな刺激が次々と目に飛び込んでくる。
めまいすら催しそうだけど、「日本のアートの現在地」とでもいうべきものを体感できるのはうれしい。
視点をちょっと転換すると、世界が開けることを教えてくれるのは、大田黒衣美の展示だ。こんな出来事から生まれた作品だという。
ある夜のこと。大田黒のアトリエに時折りやって来る迷い猫が、丸くなってカーペットのうえで寝ていた。
眺めているとそのふかふかの物体は、呼吸する即席の卓袱台に思えてきた。
大田黒は、その卓袱台に何かをのせたくなった。手元にあった板ガムをカットしてレリーフをつくり、猫の背中にそっと置いて写真を撮った。
以降は猫が遊びに来るたび、ガムのレリーフを制作するように。大田黒にとって猫の背中はいつしか、不意にやって来る「小さなカンヴァス」となったのだ。