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亀裂の持つ「力」や「破綻」
改めて眺めると、亀裂の持つ「力」や「破綻」が、美しさを湛えていると思えた。そこで新里は、制作の過程で意識的に器の肌にヒビを入れ、焼成するときの火の力で裂け目が生じるようにした。
そうして生まれたのが、あらかじめ亀裂を持つ《光器》シリーズ。工房で自作と対話し、向き合い続けることによって生まれたアイデアであり、作品だったのだろう。
それぞれの器の裂け目を眺めていると、見てはいけないものを見てしまったような気分になる。でも、その破綻がなんとも美しく感じられ、背徳感すら抱いてしまう。
広い会場では室を移るごとに、異なるアーティストの展示が現れる。上記のほかに利部志穂、笹川治子、髙木大地、春木麻衣子、山本篤、竹村京と鬼頭健吾、袴田京太朗が力作を見せてくれている。
いずれも現代アートの最前線で発表を続けている面々だけに、室ごとにまったく異なる世界が形成されていて、巡っているうち眼と心がチカチカしてくる。
またどの室にいても、それぞれ違った風が自分の中を吹き抜けていくのがはっきりとわかる。会場を出るころには、心身の内側に澱んでいた空気がすっかり入れ替わって、爽快な気分になれること請け合いである。