「運ばれてきた猫には嘔吐や下痢の症状があり、顔面は痙攣し、よだれも出ていた。かなり深刻な状態でした。しかも、肝臓や腎臓の毒素の数値が非常に高かったんです。腎臓が弱い猫にも同様の症状が出ることがあるのですが、慢性的に症状がある場合はガリガリに痩せてしまいます。しかし運ばれた猫は体格が良かったため、何らかの毒をもられるなどして急変した可能性が非常に高い。一刻を争う状況で、点滴を打つなど手を尽くしました。しかし2日後に死んでしまいました」
ほかにも数匹の猫が行方不明になっている
大島さんらから、ポッポ以外にも同様の症状を呈して死んでいた猫が複数いることを聞いた亀田獣医師は保健所と警察に通報。千葉県警は猫2匹の死体を調べ、毒物が何なのかを特定するなどして捜査しているという。
大島さんによると、死亡が確認された猫のほかにも餌やりの時間に出てこず、行方不明となっている猫もほかに数匹いるという。
「死んだ猫もみんな必死に生きていました。キナコは数年前、周囲の人に可愛がられ、あるバスターミナルに居着いていました。しかし猫が好きではない人が10キロ以上離れたところに連れて離してしまいましたが、自ら戻ってきました。さらに別の人に引き取られることになりましたが、うまくいかずに公園に来た経緯があります。人間に翻弄されてしまった生涯の最期がこんな形になるなんて……。
過去に手術したことにより、片目が釣り上がったバクは愛嬌のある人気者で、来園者の中にはその死を知って涙した公園の常連さんもいます。なぜ突然、みんなの命が奪われることになったのか。何があっても犯人を許せません」
園内には防犯カメラがないため、大島さんは連日、午前2時や3時まで見回っているという。袖猫パトロール隊は猫の不審死の情報を求める看板なども設置し、不審者に目を光らせる日々が続いている。
警察庁は3月25日、2020年に全国の警察が動物愛護法違反で検挙した動物虐待の件数が102件だったと発表。そのうち猫が半数以上を占めた。遺棄が多いが、殺傷行為も全体のうち29件を占める。多頭飼育崩壊といった飼育面での虐待の割合も多い。
大手紙警察担当記者はこう解説する。
「数多くの事件情報が寄せられる中で、動物愛護法違反はどうしても後回しにされやすい。一方で、残虐な事件の被疑者が前段階として動物の虐待に手を出すケースも多く、警察としても地域の治安を脅かす存在として、力を入れているのも事実だ」
いま、コロナ禍で癒しを求める人の間でペットブームが起きている。しかし一方で飼育放棄も増加しているという。大島さんは肩を落として、こうつぶやいた。
「誰かが毒を盛ったんじゃないかと思えてなりません。残酷な写真を出したくはなかったが、現実を知ってもらいため断腸の思いで死んだ猫たちの写真を提供しました。新たな犠牲が出ないよう、多くの人に公園で起こっている現実を知ってもらいたいです」