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アイドルの闇が次々と…韓国芸能界「いじめスキャンダル」で“泥沼の巨額訴訟戦”が始まった

2021/04/20
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「途方もない損害が今も続いている」

 ジスが主演を務めたドラマは全20話の時代劇で、制作費だけで200億ウォンかかったと言われている。ところが、ジスが学暴スキャンダルによって6話でドラマから降りたため、主演俳優を交代してから再撮影するしかなかった。制作会社はこれに関してジスの所属事務所であるキーイーストに損害賠償訴訟を起こしたのだ。

 制作会社のビクトリーコンテンツ側は報道資料を通じて、「当社は再撮影によるスタッフ費用、場所及び装備使用料、出演料、美術費などの直接損害を被り、他にも視聴率低下、海外顧客のクレーム提起、期待売上減少、会社イメージ損傷など相当期間将来まで影響を及ぼしかねない途方もない損害が今も続いている」と主張し、「キーイースト側の非協力により賠償協議が円満に進まず、訴訟を起こすことになった」と述べた。

 一方、キーイースト側は、「俳優交代による追加撮影本費用について責任を負う意向は十分ある」としながらも、「ビクトリーコンテンツ側が提示した制作費推定金額で最終合意をするには具体的な根拠が足りないため、実際に精算内訳を提供してくれるよう丁重に要請している」とし、「非協力的な態度で臨んだ」という制作会社側の主張を否定している。

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人気グループ(G)I-DLEのスジンも対象に ©共同通信社

 この訴訟について、ある芸能専門記者は次のように説明する。

「キーイーストは、『冬のソナタ』で日本でもヨン様ブームを巻き起こした元祖韓流俳優のペ・ヨンジュン氏が設立したエンターテインメント社で、2018年に少女時代などを率いるKPOP代表企業のSMに買収された。芸能人マネジメントだけでなくドラマ制作にも力を注ぎ、日本での事業も活発に展開している韓流ビジネス系の大企業だ。キーイーストとしては、具体的な根拠や交渉過程の透明化なしに制作会社と合意を結ぶことで、ややもすれば経営陣背任などの問題が持ち上がる恐れがあると見ている。これまで以上に、法的な手続きを踏んで合意事実を透明化して管理しようという意図もあるとみられる」。

「行き過ぎだ」との声もあるが……

 今回の訴訟の結果を受け、韓国芸能界では巨額の訴訟戦に火がつくものと見られる。すでに制作が完了した『ディア・エム』は、主演女優のパク・ヘスの学暴問題で放映が無期限に中断されており、最近放映が始まったドラマ『模範タクシー』は、人気ガールズグループのAprilのメンバーのイ・ナウンの学暴スキャンダルによって60%以上終了していた撮影分をご破算にして新しい女優を投入して再撮影を行っている。

「Stray Kids」のヒョンジンをはじめ、「(G)I-DLE」のスジン、ドラマ『梨泰院クラス』の若手俳優のキム・ドンヒらは、学暴疑惑でモデルを務めた広告が停止された。もし、彼らの学暴疑惑が事実であることが明らかになれば、制作会社や企業側から所属事務所へ金銭的な賠償を要求する訴訟が後を絶たないだろう。

 ただ、芸能界では「10年以上も過ぎた過去の学暴問題について、所属事務所に責任を問うのは行き過ぎだ」という主張もある。