結局、6人の通報者を含む計7人の郵便局長が2019年秋、元副主幹統括局長と複数の幹部局長を相手取り、通報者捜しとその後の不利益などで精神的苦痛を受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こすまでに至った。
福岡県警も同時期から捜査に乗り出し、2020年1月には、元副主幹統括局長が一部の局長に通報者と認めるよう迫ったとして、強要未遂罪の疑いで福岡地検に書類送検した(福岡地検は今年4月5日、元副主幹統括局長を強要未遂罪で福岡地裁に在宅起訴したと発表した)。
通報者捜しは「指導の一環」
郵便局長7人が元副主幹統括局長を含む3人の有力局長に慰謝料を求める訴訟は、福岡地裁で続いている。被告となった元副主幹統括局長側は、請求棄却を求めて争っている。
元副主幹統括局長は裁判所に提出した書面で、一連の発言をしたことは認めつつ、こう主張している。
〈被告(元副主幹統括局長)の性格等を知り尽くす原告が、あえて激怒する態度・発言をとり、不穏当な言辞を引き出したのではないか〉
〈原告と被告は親子のような関係。被告自身、原告を実の息子のようにかわいがり、強い絆を築いていた。何でも腹を割って言い合える仲だった〉
〈厳しい口調で叱責することはあったが、どこの会社にも見られる程度のもの〉
〈原告は被告が怖くて(息子である局長の行為を)報告できずに内部通報したと主張するが、およそ信用できない〉
内部通報制度については、独特の考えを披露している。
〈内部通報したのが郵便局長なら、被告が最も重視する郵便局長同士の絆・結束にひびが入り、修復できなくなるのではないかと考えた〉
〈(通報内容が)不処分となったため、絆・結束を取り戻そうと考えた。内部通報者捜しをするつもりは毛頭なかった〉
そして、一連の通報者捜しは〈あくまで指導のつもりだった〉と強調した。
被告側は、ほかの地区郵便局長会幹部らが降職を求めた行為も認めつつ、「あくまで任意の相談・お願いに過ぎない」と主張している。
元副主幹統括局長の言葉は、音声を配信した朝日新聞デジタルなどで聞くことができる。その迫力あるやりとりが「どこの会社にも見られる」と本気で考えているのなら、彼らの“常識”はやはり世間のそれとはかけ離れているのではないか。
被告側の弁護士には書面と電話で何度か取材を申し込んだが、コメントを得ることはできなかった。