「人生100年時代」と言われて久しい今日このごろ。たとえ定年退職後でも、生きていくためには働かなければいけない人も多いはず――。そんな今の時代の“おじさん”の定年後のセカンドキャリアをテーマにした漫画が『はたらくすすむ』(ヤングマガジン刊)だ。

 定年退職後に妻にも先立たれ、茫然とした日々を送る主人公の長谷部進は、思わぬ勘違いからピンクサロンのボーイとして再就職することに。真面目一徹で生きてきた進は、慣れない夜の世界に戸惑いつつも、その仕事ぶりから徐々に周りに信頼されていく…というストーリーだ。どこかかわいく、けれど年相応にたのもしい、「66歳新人ボーイ」のセカンドキャリアを描いた本作。その裏側を作者の安堂ミキオさんに聞いた。

『はたらくすすむ』第1巻 ©講談社

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定年退職後のおじさんの新天地は…まさかの風俗店!

――「定年退職後のおじさんが、風俗店に再就職」というのは、なかなかエッジの立ったテーマです。進さんのようなシニア男性を主人公にしようと思ったのは、どんな理由があったんですか?

安堂 そこは自分の実体験が少し影響したように思います。主人公の進さんは奥さんが定年後に亡くなってしまい、いろんなことが手に付かずに娘との関係も上手くいかなくなってしまいます。そこから再就職を決意するようになるんですが、実は私の母親もがんで亡くなっていて。

 ウチの両親ってもともとかなり仲が悪かったんです。母はかなり気の強い女性で、父は普通の会社員だったんですけど、もういつ離婚してもおかしくないという状態だったんですよね。でも母が末期の乳がんだとわかったら、父がもうガラッと変わって本当に献身的になってしまって、それに驚いたんですよね。母が亡くなった後もずーっと仏壇に話しかけているような感じで、なんかその父の姿が本当に衝撃で…。「あ、人ってこんなに変わるのか」というのに驚いたんです。

 

「子どもから見える夫婦像とは違う夫婦の関係があるのかな」と思って、その経験をきっかけに「これは描かずにはいられない」と考えるようになりました。結果的に“セカンドキャリアを新天地でスタートしたおじさん”の企画になりました。