風俗店にある「ロマン」と“おじさんボーイ”の魅力
――しかしその“新天地”が風俗店というのもすごいです。
安堂 そうですね(笑)。再就職先を風俗店にしたのは、そういう夜のお店にもともと個人的に興味があったからです。自分自身では経験はないんですけど、私も女性として他人事じゃないわけですよ。もしこの道が上手くいかなかったら、そういう業界で働こうという選択肢が出ることもあるかもしれない。そんなに日常とかけ離れた世界でもないのかなと思って。実際の作中の舞台にピンクサロンを選んだのは、知り合いにピンサロが大好きっていう人がいて興味を持ったのが大きかったです。
――そんな現場で少しずつ、進さんが活躍を見せていきます。
安堂 「こういうおじさんがお店にいたら、働いている女性側は嬉しいんじゃないかな?」という気持ちで描いていましたね。実際女性から見ると進さんみたいな人ってすごい安心感があると思うんです。なんでしょうね…定年後だし、いろんな仕事の経験値もあるし、性別としては男性なんだけれど性的な目で見てこないというか。
一方でサービスを受ける男性目線はちゃんとわかるし、おばさんとも違う。絶妙に良いポジションだと思うんです。この世代のおじさんだから言えることも多いでしょうし、説教臭くない感じで相談に乗れる気がする。だから進さんは、働く女性にとっての「理想のオジサン像」みたいなイメージですかね。
実際のキャストに話を聞いて思ったことは…?
――なるほど。実際に店で働くキャストの皆さんにも取材はされたんですか?
安堂 はい。作中のある女の子のモデルにもなっている子なんですけど、話してみたらすごくしっかりした子だったんです。女子大生なんですけど「お金を貯めるのが趣味」って言っていて。田舎から出て来たばかりの時に、ティッシュ配りの人にもらったティッシュに書いてある求人の「フロアレディ募集」みたいなのを見て応募したら、それが風俗だったみたいで。
それで「まぁ、それもありかぁ」と思ってやってみたんだそうです。その子、それまで普通に男性と付き合ったこともなかったそうで。だから「普通の恋人同士は、こういう感じでやるんだろうな…とかそういう風に思いながら働いていました」と言っていたのは結構、驚きました。
あとは「働いているうちに笑顔の作り方が上手くなった」という話もしていました。「このタイミングでこういう笑顔をすれば喜んでもらえるんだな」とか、そういうのが分かるようになった。もともとは笑うのがすごく苦手で、笑顔がコンプレックスだったらしいですけど「働いていく中で笑えるようになった」と言っていたのは印象に残っています。