日本刀で相手の腕を切り落とし、窃盗では数億円を荒稼ぎ——。1980年代後半に中国残留孤児2世、3世を中心に結成され、その凶悪さから恐れられた半グレ集団「怒羅権」。その創設期のメンバーで、13年間刑務所に服役した筆者・汪楠(ワンナン)氏の著書『怒羅権と私 創設期メンバーの怒りと悲しみの半生』(彩図社)が話題だ。
怒羅権の活動の実態から、出所後に犯罪から足を洗い、全国の受刑者に本を差し入れるプロジェクトを立ち上げるまでの壮絶な人生を描いた汪氏の自伝から、一部を抜粋して転載する。(全6回の4回め/#5、#6を読む)
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ノウハウを奪うため、風俗店の店長を尾行して…
詐欺グループと並行して、私は風俗店の経営も手掛けていました。
もともとは東京都江戸川区などの風俗店からミカジメ料を受け取っていただけだったのですが、あるとき店で働く女性から「ケツモチでいくら受け取っているのか」と質問をされました。「1店舗につき1ヶ月50万円」と答えると、「直接経営すればもっと儲かる。普通の人はバックがいなければできないけど、あなたならすぐにでも始められる」と言います。
そうだろうなと思う反面、風俗店の経営はノウハウがないのが問題でした。そこで、モグリの風俗を経営している者をさらって、顧客と女性を根こそぎ奪うことにしました。
当時、出張型の本番ヘルスなどの場合、女性はプレイが終わるとすぐに店長に金を持っていくシステムでした。店長は大抵の場合、近所の喫茶店などで待っています。女性を尾行すれば簡単に見つけ出すことができます。
コツを1つ挙げるとすれば、しばらく観察することです。首尾よく店長を見つけられても、雇われである場合、身柄を押さえても意味がありません。本当のオーナーはその間に逃げてしまいます。
雇われの場合、数時間に一度送金するために喫茶店を出ます。つまり、喫茶店から一日中離れない者ならばオーナーである可能性が非常に高いのです。