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なぜ20代でこれほど多角的に犯罪を成功させたか?

 なぜ20代半ばにして、これほど多角的に犯罪を成功させられたのか、尋ねられることがあります。

 少年の頃から危険の中で生きてきたため、観察眼が養われていたというのが大きいと思います。相手がどれほどの力量なのか、本当にこちらを殺すつもりがあるのか、そういったことを見抜く眼力がなければ生きられませんでした。

汪楠氏 ©️藤中一平

 観察力を突き詰めていくと、相手がどういう立場で、どのようなものの考え方をするのかを推測する能力に繋がります。例えば、銀行員は普段どのように人を見ていて、どのような風体や話し方をすれば怪しまれることなく取引ができるか、というように。

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 人間を理解する力が身につくと、次に仕組みを理解する力が養われます。人がどのように動くかわかるから、初めて見る仕組みであっても、「こういう仕組み以外では成り立たないだろう」といった勘所が働くのです。だから、仕組みの穴をついて犯罪を成功させられるのです。

 犯罪に限ったことではありませんが、1つの物事を成功に導くためにはいくつかの関門があります。仮に10個あるとしたら、大抵の人は3、4個目で「これ以上は限界だから止めておこう」ということになります。しかし、私は観察眼や仕組みを理解する力があったことで、感覚的には7個目くらいまでの関門は容易に突破できました。ここまでくれば残りの3つの関門を突破することに全力を尽くすだけです。犯罪にせよ、ビジネスにせよ、稼ぎ出す金額の桁を変えるのは、この違いなのです。

汪楠氏 ©️藤中一平

数え切れないほど持っていた携帯電話

 犯罪を組み立てるにあたって、注意を払ったのはリスク管理でした。

 当時、私は常に5つから7つのグループを動かしていました。構成員は怒羅権とは無関係の人々です。

 また、数え切れないほどの携帯電話を所有し、使い分けていました。各グループには班長がいて、その人間とだけつながる携帯電話です。裏面には、そのグループに対して名乗っている名前が書かれています。ある携帯電話には鈴木、別の携帯電話には加藤というように。電話がかかってくると「俺は鈴木だったな」と思い直して電話を取ります。

 このようにして、1つのグループがほかのグループとは接触しないように細心の注意を払っていました。もし彼らが勝手に連絡を取り合うようになると、反逆をされたり、勝手な犯罪を始めて足がつくきっかけになったりするからです。(#5へ続く)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。