新学期、新卒入社、異動……春は新たな生活がスタートする季節。新生活を機に、マンションやアパートなどの集合住宅に移り住んだ人もいるだろう。多くの場合、単身者向けの賃貸物件は同じ建物にどんな人が住んでいるのかわからないケースが多いはず。住人同士に交流があると人間関係がややこしくなるが、たとえ顔が見えなくても住人間のトラブルは起きる。今回は、ひとり暮らし経験者が遭遇した“隣人トラブル”のエピソードを紹介しよう。

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 隣の部屋と壁を一枚隔てただけの集合住宅の騒音問題は、もっともポピュラーな隣人トラブルと言えるかもしれない。宮田沙南さん(仮名・31歳)は、隣室から聞こえる騒音に長い間悩まされた、と話す。

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「休日になると朝6時から夜12時までズン、ズン、ズンという重低音が隣の部屋から響いていたんです。本当に1日中ビートが鳴り止まなくて、体に響くから耳をふさいでも意味がなくて……。でも、隣は角部屋でその下の部屋も空室だったので、私が管理会社に連絡すると確実に私の苦情だとバレちゃうんですよね。それが気になって、なかなか言い出せませんでした」

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 しかし、1年以上も隣人による重低音にさらされた宮田さんは、“後天性聴覚過敏症”を発症してしまう。聴覚過敏とは、特定の音や声が大きく聞こえ、苦痛を感じるというもの。発症の原因や症状はさまざまだが、彼女のように日常のストレスが引き金になるケースもあるという。

「あくまで私の場合ですが、聴覚過敏になってからカフェなどの店内BGMや、“観るつもりがないテレビの音”が、すごく気になるんです。美容院でドライヤーの音が一瞬途切れたときに、店内のBGMが耳に入ってきて具合が悪くなってしまったこともありました」

 日常生活にも支障が出てきたため、意を決してマンションの管理会社に相談。その結果、個人への注意ではなく、騒音の注意書きが全室に配られることになった。

「注意書きが配られたその日、隣の部屋だけでなくマンション全体が静かになったのが印象的でした。それ以来、隣室からの重低音も聞こえなくなったので、かなり過ごしやすくなりました。もっと早く相談すればよかったなあと後悔しています」

 騒音の悩みも解消され、現在は彼女の症状も少しずつ改善されているという。「生活していれば、誰でも音は出るし……」などと騒音を軽く考えるのは、少し危険かもしれない。