「警察から管理会社に連絡してもらい、警察同伴で郵便受けの周りに設置された防犯カメラの映像を見ることになりました。郵便受けを正面から捉えた映像を見ていると、男の人が郵便受けに近づいてきて、カメラに背を向けて何かゴソゴソはじめたんです。ただ、直接手を入れている様子は撮れていませんでした」
たとえ不審な行為が映っていても、“郵便受けに手を入れている映像”がないと、窃盗事件として立件できないという。
「また、警察の人には『カメラの死角を狙い、動作も手慣れているので常習犯の可能性が高い』と言われました。別角度の防犯カメラの映像も確認すると、年齢は30代前後のごく普通の男性が映し出されました。すると、管理会社の人が『桜井さんの隣の部屋に住んでいる男性かもしれない』と言い出したんです」
たしかに、帰宅のタイミングを知っていたり、郵便受けの場所をピンポイントで狙ったりという状況から見ても、隣人の可能性は極めて高い。それを聞いた彼女は「背筋が凍った」と振り返る。
報復が怖くて引っ越すしかなかった
刑事事件として立件できないが、警察から直接厳重注意は出せると提案された桜井さん。しかし、厳重注意は出してもらわずに退去を決めたという。
「一刻も早くマンションを出たかったのもありますが、本名が知られているし、もしかしたら勤務先もバレているかもしれない。個人情報が先方に漏れすぎているので、『報復されたくない』という恐怖のほうが強かったです。とくに当時は初めてのひとり暮らしだったので、強気の判断ができなかった部分もあります。今だったら注意くらいはしてもらうかな」
現在も彼女は別のマンションでひとり暮らしをしているが、これほどの恐怖体験には遭遇していないという。
顔の見えない隣人とのあいだに起きるさまざまな“トラブル”には、いつ巻き込まれるかわからない。郵便物の窃盗は論外だが、騒音やごみの問題は自分が加害者にならないよう注意する必要がありそうだ。