世界的巨大ターミナルから1日に数人しか使わないような小駅まで、日本には9000もの駅があるという。日夜乗っている電車の終点もそんなたくさんの駅のひとつだが、えてして利用者の多くはその手前の「いつもの駅」で下車してしまう。

 そうした様々な終着駅を歩き続けた鼠入昌史氏の著書『ナゾの終着駅』より、一部を抜粋して掲載する。

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 何事も、良し悪しは表裏一体である。それはもちろん鉄道にも当てはまる。どこまでもつながった線路の上を走って、遠い町まで連れて行ってくれるのは実にありがたい。

 けれど、それは裏を返せばうっかり寝過ごすと目覚めたときにまったく知らない土地に連れて行かれてしまうということでもある。飛行機ならば寝ている間に目的地を越えて遠くまで飛んでいくことはないから、“見知らぬ土地へ連れて行く”というのは鉄道ならではの欠点なのである。

 ……というわけで、今回もそんな見知らぬ終着駅を訪れた。目的地の駅の名は上総一ノ宮である。JR京葉線や総武快速線の一部が終着としている駅だ。

京葉線、総武線快速の“ナゾの終着駅”「上総一ノ宮」を目指す。東京からは約1時間半、まさにちょっとした旅の距離

 帰宅時間帯の寝過ごしも危険だが、総武快速線は横須賀線と直通しているから朝だって要注意。

 例えば横須賀線に乗って東京駅で降りるはずが、なぜか金縛りにあってそのまま総武快速線に直通、気付いたときにはここははるばる上総一ノ宮、なんてこともないとはいえない。

 そんなげに恐ろしき上総一ノ宮駅はどこにあるのか。地図を開いて探してみると、東京からはるか東、房総半島をズバッと横断して九十九里浜にほど近い場所。そもそも京葉線の駅でも総武本線の駅でもなく、外房線の駅だ。

 つまり、京葉線も総武快速線も、蘇我駅から外房線に直通して上総一ノ宮駅を目指すことになる。今回は、昼時の京葉線で上総一ノ宮に向かった。

東京からざっと1時間30分。着くころには車両はすっかりがらんどう

京葉線の「上総一ノ宮」行きからスタート

 京葉線のスタートは、ご存知東京駅の遠い遠い地下ホーム。始発駅なので座ることができた。少しずつ乗客が増えてきて、新木場駅を出たあたりでは立っている人もたくさんいるくらいの混雑ぶり。そしてその半分くらいが舞浜駅で降りていった。例のテーマパークはなかなか盛況のようだ。

 そこから先は少しずつ乗客が減っていく。外房線に直通する蘇我駅では、もうすっかり車内はガラガラである。