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「自分とは無縁の職業と思っていました」 黒柳徹子が女優になり、NY留学を決意した理由

「自分とは無縁の職業と思っていました」 黒柳徹子が女優になり、NY留学を決意した理由

『チャックより愛をこめて』より#1

2021/05/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 国際, 芸能

note

 その直後に新聞で、NHKが放送劇団員を募集していることを知り、それなら、子供に話をするやりかたを教えてくれるに違いないと、なんとなく試験を受けたのです。人生とは不思議なものだと思います。いい母親になりたい、とただそれだけの気持で受けた試験だったのに、いっこうに母親にならず、いつのまにかこんなニューヨークのアパートに一人で住むことになるのですから。

アメリカに来た理由

 さて、試験にパスして、NHKの専属になってからの十五年間、とにかく一生懸命やってきました。でも、なにによらず一生懸命やるとくたびれるし、そのことだけにかかりきっていたのですから、ほかのことにゆっくり目をむけたり、新しい何かを常に吸収する、というチャンスはあまりないわけです。そこで私は、一年くらい前に、しばらく仕事を休んで、ひと息いれようと決心しました。ひと息いれるのには、アメリカじゃなくて日本にいても、またよその国でもよかったのですが、まるまる仕事から離れるのと、生活を少し変えてみるためには、やはり日本から出たほうがよさそうだし、言葉の関係とか、友だちがたくさんいるということで、いちおうアメリカにしてみました。これだって絶対ここというわけじゃないので、途中でよその国へ引越してもいいし、というような、いたって自由な考えで、来てみました。

日本では見かけられないニューヨークのリボン専門店

 私は今度のこの決心を、汽車がレールからちょっとはずれて引込み線に入るのだ、というふうに考えています。引込み線にじーっと止まっている汽車は、時に寂しげに、またレールを走ってる汽車からすると置いてきぼりをくっているように見えます。たしかに寂しかったり心細かったりもするでしょうけど、案外、いままで急いで走ってるときには気がつかなかった景色を発見したり、新しいことがまわりで起こったりで、自分なりに居心地よくしていられるかもしれません。

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 とはいうものの、知らない土地で、しかも悪評高いニューヨークに、生まれて初めてのアパート生活を始めようというのですから、やはり相当の度胸がいるとは思っています。というわけで、長くなりました。前説は短いに限ります。では、AのつぎはBにまいりましょう。