ベストセラー小説を映画化した「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」が、ようやく日の目を見る。ディズニーに買収される前の20世紀フォックスが映画化権を買ったのは、2016年。撮影は2018年に行われ、昨年5月に公開されるはずだった。しかし、コロナでアメリカやヨーロッパの映画館が閉鎖され、延期に。もともと大人向けの映画に興味がないディズニーは、そんな状況を受けて、あっさりとほかに売ってしまう。買い手は、コロナ禍でパラマウントから「シカゴ7裁判」も買っているNetflix。そうしてやっと、今作は、本来の劇場公開予定日から丸1年後の5月14日、全世界配信されることになったのだ。
ヒッチコック映画へのオマージュ
この映画の主人公アナは、広場恐怖症を抱える児童心理学者。家に籠りきりの彼女は、古い映画を見たり、酒を飲んだり、近所の家を双眼鏡で覗いたりして毎日を過ごしている。そんなある日、向かいに新しい家族が引っ越してきた。その家族とかかわるようになったことで、アナの日常は大きく変わっていく。
そんな設定を聞くと、ついヒッチコックの「裏窓」を連想してしまうかもしれない。それは監督のジョー・ライトにしても同じだった。
「だから映画の冒頭に『裏窓』へオマージュを捧げるショットを入れたんだよ。僕らもわかっていますよというのを、観客に向けて最初に宣言しておきたかったんだ。そのほかにも、『サイコ』『見知らぬ乗客』にまつわるショットも入っている。そういったイースターエッグが、所々に隠されているよ」
「息子は見事に出演の約束を取り付けてくれたよ(笑)」
アナを演じるのは、6度のオスカー候補入り歴をもつ売れっ子のエイミー・アダムス。ライトとアダムスは何年も前から「いつか一緒に仕事をしよう」と話してきており、ライトは、アダムスが出てくれるならば自分も今作の監督を正式に引き受けようと決めていた。
「ベビーシッターが見つからなかったので、エイミーとのミーティングには当時8歳だった息子を連れていくことになった。息子に『今日、これから有名な女優さんに会うよ。パパの映画に出てくださいとお願いしにいくんだ』というと、息子は『僕がお願いしてあげる』と言った。ミーティングの席で、エイミーは僕よりも息子とたくさん話して、息子は見事に出演の約束を取り付けてくれたよ(笑)。今作はひとり芝居のようなものだから、エイミーのように頭が良くて仕事熱心な主演女優が必要。僕らは10週間もひとつの家に籠って撮影をしたが、彼女とのコラボレーションはすばらしいものになった」