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英国留学時代のルームメイトが振り返る、三浦春馬さんの慟哭――2020 BEST5

フラットの部屋で、突然、私の手を握りしめて……

2021/05/04

パイナップルをオトナ買い

 三浦さんは料理好きとして知られ、後述の日中合作映画に関する中国メディアの取材でも「鶏の唐揚げ、マグロのムニエル、ナスの煮浸し」を得意料理に挙げていた。だがその取材の3年後のロンドン生活スタート時は、かなり偏食な生活だったようだ。

〈ハルが越してきてから何日かが経って、彼は毎朝オートミールだけを食べていることに気付いた。「何か美味いものを買いに行こうよ」私はハルを誘って近所のスーパーマーケットに出掛けた。私は彼と、パスタのようなものを選ぶつもりだったが、ハルが冷凍庫に直行し、冷凍パイナップルのすべての箱を買い占めることを誰が予想したろうか。ハルは「これすごくいいよ。僕はこれを食べるのがものすごく好きでさ……」。私はその時、ハルってちょっとビョーキなのかなと疑ったものだ。

 でも後になって、フラットの冷凍庫内のA4判大のカット・パイナップルの袋が毎日深夜と早朝にひと袋ずつ減っていることに気付いた。やがて私はそんなことにも慣れた〉

 2019年8月29日、台北市内で主演ドラマ『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)台湾放映記者会見に臨んだ際、三浦さんの大好物と知らされていた主催者が台湾産パイナップルを用意、司会者から“食レポ”を求められる一幕も。ステージで試食した三浦さんは、「すごいジューシーです。甘いですし、日本で食べるものよりも爽やかな甘さがある。本当に瑞々しい」と絶賛しつつ豪快に何切れもパクついた。

©iStock.com

突然気付いた、あのスターが君だったのか

 三浦さんはできるだけごく普通の学生として目立たず過ごしたかったらしく、ルームメイトのダニエル氏にも事細かにプロフィールを話すことはなかった。ファンから気付かれないように注意している様子だったという。

〈ハルは毎日ヘアスタイルを変える――しかもカッコよくキメるためではなく、他人に気付かれないために変える――という、私が知り得る唯一の人間だった。帽子を被ったり前髪を下ろしたり、ファンから気付かれるのをひどく恐れているようだった〉

 ところが、ある出来事をきっかけにダニエル氏も「ハル」が日本の芸能人であることに気付いた。同時に日本人留学生たちの間でも、三浦さんの存在が瞬く間に知れ渡ったようだ。

〈ある日、図書館で別の日本人の友人たちと自習をしていると、突然一人の女子学生が私の横の友人のもとに駆け寄ってきて「芸能人に遭ったよ!」と耳打ちした。その芸能人の名前を聞いて友人はひどく興奮し、私は友人に、その芸能人の画像を見せてと頼んだ。友人は素早くモバイルデバイスのネット検索サイトを開いて超速で「miura haruma」と打ち込んだ。表示された「三浦春馬」の画像は「え? 彼って私のルームメイトじゃないか!」。

 私はその時、ハルが何者かを初めて知った。知り合った当初、彼は自身を芸能界で働いてると自己紹介したが、私はあまり深く考えず、ファッションモデルか何かだと思っていた。私はもともと日本の芸能に興味はなかったが、ハルが出演した映画『恋空』(2007年)は観た。ヒロインの新垣結衣がとても美しかった印象が残っている。

 私はハルに尋ねた、「ねえ、君はかなり昔から芸能人なの? 私は君が出ている映画を観たことある」。彼は何の映画かと聞き返してきたため、「10年くらい前のほら、あれだって」と答えると、彼はすぐ分かった様子だった。「新垣結衣ちゃんって綺麗だよねえ。私に紹介してくれない?」と言うと、ハルは「彼女は超絶超絶超絶ナイスな子だよ! でも、ずっと個人的連絡先は知らないんだ〉

三浦さんは突然「チケットを買って来たよ。午後、一緒に『ロンドン・アイ』に乗ろうよ」とダニエル氏を誘った。男ふたりは、カップルや家族連れで賑わう巨大観覧車「ロンドン・アイ」のゴンドラに揺られて自撮りも楽しんだ ©DANIEL@百度貼吧