2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。エンタメ(男性)部門の第4位は、こちら!(初公開日 2020年7月23日)。
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7月18日に30歳の若さでこの世を去った三浦春馬さんは、2017年、英国へ短期留学をした際、中国人ルームメイトと共同生活を楽しんだ。また2014年には、オール上海ロケの日中合作映画に主演し、全編中国語のセリフに吹き替えなしで挑んでいる。中華圏でも俳優として高い人気を誇っていた。
中国出身のルームメイトが、三浦さんとの日々を追憶する。
ロンドンで中国人が日本人と出会う
三浦さんは20歳になるまでは、海外にまったく興味がなかったとかつて語っていたが、20歳を過ぎてから英語を勉強し始め、2017年の夏、3カ月間英国で語学留学をした。語学学校に通いつつ、ヴォイストレーニングなどのワークショップに参加したという。ロンドンとイングランド南部の港町・ボーンマスでの留学生活だった。
ロンドンでは、中国人青年「ダニエル(※ハンドルネーム)」とルームシェアをした。ダニエル氏は、三浦さんと過ごした日々を、それぞれが帰国して間もない2017年9月、中国検索最大手・百度(バイドゥ)が提供するコミュニケーションプラットフォーム「百度貼吧」に「三浦春馬と彼のルームメイトは、共にどんな体験をしたのか」というタイトルで、一緒に生活した日々の断片を綴った(以下、日本語訳はすべて筆者によるもの)。
帽子を被ったこの日本人は実に格好いいルックスだなと思った
〈私(※ダニエル氏)はロンドンで、テムズ川南岸トゥーティング・ベック地区のフラットの地下室を借りていた。家主はナイジェリア出身の英国人で、ある日、家主は部屋にやって来て、「今晩、ひとりの日本人男子学生が越して来るわよ」と私に告げた。私は彼女に根掘り葉掘り訊ねた。「彼はいくつ?」「28歳よ(※実際は27歳)」。私は予想した。日本人というからにはきっとカタブツだろうと。その晩は友人とアーセナル対マンチェスター・ユナイテッドの試合を見に行く予定があったので、それきり「日本人」について深くは考えなかった。
観戦を終えて夜遅くにフラットへ戻ると、家主は「彼がもう到着しているわよ。でも、ロンドンの気候にまだ慣れないみたいで、あなたたちの部屋ではなく上の階で休んでいるわ」と言った。私は家主に彼の名前を尋ねた。彼女は「ほら、日本人の名前って憶えるのが難しいでしょ。忘れちゃったわ」とだけ答えた。
翌日早朝、私は自室のキッチンで朝食を準備していると、階上から微かな足音がして「28歳日本人」が下りて来たのを察した。私はすぐに右手を伸ばして彼に大声でデタラメな日本語を叫んだ。「オヒヨーコザイエドマス(おはようございます)」「My name is Daniel, What's your name?」振り返り様に彼を見ると、帽子を被ったこの日本人は実に格好いいルックスだなと思った。彼は少し驚いた様子で、私をとても意外そうにまじまじと見つめて言った。「Hello my name is Haruma, You can call me Haru」〉