【監督・プロ野球死亡遊戯の自薦コメント】
 第2戦は自分が登板します。あの名将・森祇晶監督いわく「日本シリーズ第2戦は大事。なぜなら勝てば翌日の移動日が気分よく過ごせるから」とのこと(もちろん他にも戦略的な理由が多数あるそうですが……)。野球ファンが気持ちよく月曜日を過ごせるよう書きました。ぜひ日本シリーズのお供にお楽しみください!

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過去の記憶は薄れても、日本シリーズのことは覚えている

 野球ファンにとって、日本シリーズの思い出は特別だ。

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 例えば26年前、まだ屋根のない西武球場のデーゲーム。小学6年時のクラスメイトのH君に貰ったチケットで生まれて初めて生観戦した日本シリーズ、2塁ベースに向かって頭から突っ込むひとりの選手に衝撃を受けた。後にも先にも、あんな猛烈なヘッドスライディングは見たことがない。広島カープの背番号51。それが、当時20歳の前田智徳だった。

 前回、横浜が日本シリーズに出場した19年前は、確か大学1年生で真夜中にバイト先の居酒屋のまかない弁当を食べながら、フジテレビの『プロ野球ニュース』で大魔神・佐々木の投球を見た記憶がある。その大学を卒業した2002年秋、プロ野球から少し距離を置いていた頃、8年ぶりの黄金カード「巨人vs西武」の日本シリーズが実現。まだ交流戦もなかったし、懐かしくなりテレビをつけたら、第3戦で今はソフトバンク監督を務める工藤公康が巨人のユニフォームを着て先発マウンドに上がっていることに微妙な違和感があった。埼玉で育った自分にとって工藤と言えば大舞台に滅法強い西武の若きエースだから。……って、5日前の昼飯はどこで何を食べたのかすら忘れているのに、なんで大昔の日本シリーズの先発投手まで覚えているのだろうか?

日本シリーズは野球ファンの人生時計

 わざわざネットでググらなくても、あらゆる日本シリーズの試合と時系列を鮮明に記憶している。不思議なもんだ。1年ごとにクラス替えがあり、時に進学する学生時代とは違って、大人になると就職して環境の変化が減り20代後半を迎える頃には記憶の順番が曖昧になってしまう。今着ているグレーのコートを買ったのはどの冬かなとか。元彼女と出会った合コンは3年前の夏か、4年前の秋だっけとか。忘年会シーズンのカラオケで、やたらと『恋するフォーチュンクッキー』が歌われていたのは何年前だろう……みたいなあの感じ。

 恐らく、このコラムを読んでいるあなたも、小学校の同級生の名前は忘れていても、夢中になって見た日本シリーズの両チームスタメンなら暗記しているのではないだろうか? 個人的に過去を思い出す必要がある時は、まず日本シリーズを基準にする。例えばドラフトで7球団競合の清宮幸太郎が小学1年だった2006年に何があったか? ヒット曲やテレビドラマは忘れたけど、まだガッツ小笠原や新庄剛志がいた日本ハムが日本一になったよねなんつって。同じように多くの野球ファンは遠い未来から2017年を振り返る時、ソフトバンク対DeNAの日本シリーズが開催された年として思い出すはずだ。いつの時代も、日本シリーズは俺らの人生時計的な役割を果たしている。