文春オンライン

桃太郎電鉄を作った男が教えてくれた「ベイスターズのファンであり続ける」ということ

文春野球コラム ペナントレース2021

note

サイコロが廻れば勝ち負けはどっちにでも転ぶ

当日関係者に配られた桃鉄ユニフォーム ©ベイスターズおじさん

『桃太郎電鉄』シリーズは、地理や特産品、お金の稼ぎ方や資産運用など、さまざまな学びを得られることは言うまでもないだろう。だが、何よりも大きな学びは、人生に起こり得るマイナスの事象に直面した時の、自らの在り方を教えてくれることだと思う。

 ボンビーという貧乏神は善行を行おうとして結果的に余計なマイナスを引き起こす。かと思えば敵対プレイヤーの悪意と戦い、数億円を銀次にスられ、こつこつ築いてきた資産数百億円を、キングボンビーの一喝ですべて失い最下位へと落されるような理不尽も起こる。その惨状を前にして、虚脱する者もいれば、もう辞めたと帰るやつもいて、怒り出して友達とケンカになったことも何度もあった。

 さくまさんはかつて桃鉄のインタビューでこんなことを言っている。

ADVERTISEMENT

「みんなで集まって『桃鉄』を平和にプレイしたって、面白くなんてないでしょう。人間は嫌なことほど記憶に残るんです。そして、だからこそ勝ったときに高揚感が生まれる」(出展:https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/momotetsu/3 「電ファミニコゲーマー」2016年2月22日)

 サイコロが廻れば勝ち負けはどっちにでも転ぶ。

 野球も、桃鉄も、人生も、うまくいかない時、躓いた時にどう振舞えるか、である。最悪なことは負けという結果以上に、楽しむことができなくなってしまうことだ。

 さくまさんは過去に脳内出血、一昨年には心筋梗塞を患った後遺症で、今は言語障害が残り、移動は車椅子と身体が不自由だ。それでも精力的に仕事を続け、ベイスターズ戦がある時は、テレビの前から動かず、勝っても負けても、思い通りにならない戦いを前に一喜一憂しながら応援している。

 その姿勢に僕はまた教えられるのだ。暗黒なんてものは自分の中にある、と。

「まだまだ苦しい戦いは続くでしょうが、どんなに負けても応援はやめられません。せめて勝つときはベイスターズらしく大量得点で胸のすく試合をみせてほしいですね。三浦監督は本当にやさしい人なので、今年1年で非情な采配を学んでくれたらね。これからが楽しみですよ」

 5月1日の桃鉄デーの勝利からベイスターズは初の3連勝。5日には三浦監督の代打策が成功し、3カード連続勝ち越しと空気が変わりつつある。いきなりのいきなりの大型借金も、三浦大輔、長い物語の序章と考えれば、そんなに悪いもんじゃない。

 ペナントレースはまだはじまったばかり。みうら監督! 反撃の時間ですぞ!

さくまあきらさんと一緒に勝利に沸いた漫画家岩崎摂さん、放送作家の清正まなつさん他。 ©ベイスターズおじさん

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/45097 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

桃太郎電鉄を作った男が教えてくれた「ベイスターズのファンであり続ける」ということ

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!