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小泉 プーチンがラッキーだったのは、大統領代行に就任した2000年頃から、国際エネルギー価格が高騰しはじめたことですね。ロシアの主要な輸出品は天然ガス・石油ですから、国内の経済は飛躍的に成長しました。プーチンの最初の10年、いわゆる「プーチン1.0」は、目に見えて生活が良くなっていった時期ですね。インフラが整って行政サービスも向上した。麻薬と暴力で乱れていたロシア軍も統制され、2014年のクリミア作戦は西側が目を見張るほどの鮮やかさだった。こういった平場の生活感覚とナショナル・プライド(国家威信)の両方を、プーチンは満たすことに成功しました。

政権を下支えしている“ロシア人の心理”

 また東郷氏によると、ロシアの悲劇的な歴史と、それと深く結びついたロシア的なリーダーの伝統も、今のプーチン政権を下支えしているという。

東郷 ロシアは民主主義国家とされていますが、日本の民主主義とは性質が全く異なります。プーチンのように1人のリーダーがいつまでも権力の座に座り続けることができますし、政権転覆を目指す動きは容赦なく抑圧される。多くの日本人にとっては不可解に映ると思います。

 その特質を読み解くためには、9世紀に成立したキエフ公国まで遡る必要があります。キエフ公国はロシア人の最初の国です。この国では同時代には珍しく一般市民が政治に参加する民会という制度がありました。キエフ公国が続いていれば、今のロシアもまったく違ったものだったと思いますが、13世紀から240年にわたりモンゴル人の支配下におかれてしまいます。ここで、「外敵に対する恐怖」がロシア人のDNAに刻み込まれました。

小泉悠氏(左・東京大学先端科学技術研究センター特任助教)と東郷和彦氏(右・京都産業大学客員教授)

小泉 しかも、ナポレオン、ヒトラーの侵略によって、その恐怖心はさらに強化されましたね。

東郷 同時にヨーロッパのルネッサンスを経験しなかったロシアは、西欧の文化や価値観から切り離され、人間性の解放や個性重視の価値観が浸透していません。この点が西欧との大きな違いにつながっています。

 15世紀にモンゴルの支配を脱した後は、最高権威である“第一人者”が全権を掌握して政治を取り仕切る伝統が生まれました。第一人者がいる間は、国内は安定しています。ですが第一人者がいなくなると、ロシア革命に代表される、目を覆う大混乱が必ず起こる。この安定期と混乱期の二つの時期が、その後のロシアで延々と繰り返されることになります。そのような歴史を経て、「混乱」に対する恐怖もロシア人に植え付けられたのです。この「外敵」と「混乱」に対する恐怖が、ロシアの強い権力や政治のスタイルを形づくってきたと思います。

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出典:「文藝春秋」4月号

 2人の対談はさらに、ナワリヌイ氏のドイツとの“密約説”、ポスト・プーチンへと展開する。プーチンの力の源泉とロシアの歴史がよくわかる、対談「プーチンはまだまだ生き残る」全文は、「文藝春秋」4月号及び「文藝春秋digital」に掲載されている。

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