「審判に声をかけられて我に返るまで呆然としてました」
「ボールボーイは感情を表に出さず素早く業務をこなさねばなりません。でも2016年の日本シリーズ最終戦でレアード選手にホームランを打たれた時だけはショックすぎて動けなくなりましたね。審判に声をかけられて我に返るまで下を向いて呆然としてました」
確かに生粋のカープファンの清古さんには記憶がなくなるほどの衝撃だったに違いない。気持ちが痛いほどわかる。
ここ数シーズン優勝から遠ざかるカープだが、10年間カープを間近で見続けた清古さんはチームとしての強さをこう語る。
「若手選手の練習はとにかく凄まじいものがありました。試合後もいつもと言っていいほど若手の居残りを手伝っていました。そういった野球が上手くなりたいという空気が充満しているんです」
野球への取り組みだけではない。人としての優しさを感じることも多かった。
「選手の皆さんが本当に気さくに声をかけて労ってくれるんです。同い年の堂林選手や、鈴木誠也選手もよく話しかけてくれました。菊池選手は僕が東京行くと言ったら都会で暮らすアドバイスをくれたり(笑)。會澤さんには向こうでも頑張れと貴重なミットを頂き泣きそうになりました。長野さんもバットをプレゼントしてくださり、流れで隣にいたピレラが『俺も!』とバットをくれました(笑)」
スタッフの方にも思いやりを持って接するカープの選手たち。そんな選手のためにスタッフの皆さんが全力を尽くし、カープという球団が強く魅力的なチームになっていくのだろう。
清古さんはボールボーイをやめた今でも、ついやってしまうことがあるという。
「雨が降ってくると、この雨だとシートを出さないと。とかまだ大丈夫だなと言うのを瞬時に判断してしまうんです。それほどに僕の中にボールボーイというのは生き続けてるんですかね。僕自身も芸能界で頑張ってまたいつかどこかでカープとご縁があると嬉しいですけどね」
体に刻み込まれたボールボーイの魂。「日本一になる試合でボールボーイを務める」という清古さんの夢が後輩ボールボーイによっていつか叶えられますように。
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