令和の怪物と呼ばれる佐々木朗希投手の一軍デビュー戦で注目を集めた5月16日の埼玉西武ライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)。吉井理人投手コーチは自身のプロ初先発を振り返り、思い出し笑いを浮かべた。

「内容なんて覚えていないよ。なんにも覚えていない。覚えているのはテレビ中継があって、父親が仕事で見れないからと中継を録画していたのだけど、番組内で本日の解説者を紹介している間にノックアウトされていたということぐらい。ホンマ、すっとこどっこいなピッチングをしてしまって、まったく思い出として残っていない」

吉井コーチがプロ初先発で得た3つの気付き

 それはプロ2年目、1985年9月18日の南海ホークス戦。今はない大阪球場で行われた一戦だった。初回に5失点をすると、二回にも3失点。2回を投げて8失点で、あっという間にマウンドから消え、負け投手となった。

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 ただ、もちろん、この試合で得た教訓があり、それがその後の人生に活きることになる。一つは四球。初回に先頭打者に四球を与え、このイニングだけで5点を失った。

「四球はもったいない。一番打者が二軍でよく打たれていた人だったので嫌な感じがして四球になってしまったのだと思う。やっぱり四球からの失点だよね」(吉井コーチ)

 二つ目はマウンドに上がる時の考え方。これはのちになって気が付き、指導者になっても大事にしていることだ。「自分のできないことをマウンドでやろうと思ってもダメ。若い実績のない選手は、あくまでチャレンジャー。二軍でやってきたことを一軍でもやるだけということ。オレは初先発の時に二軍でもできなかったことを一軍でもやろうとしていた。それは思い上がり。実力以上の結果なんて出るわけがない。それは指導者となった今でも指導をする上で大事にしている。選手本人には、まずはなにが得意でなにが苦手かと自分をしっかりと知ってもらって、得意なこと、出来ることに集中をしてもらう」と吉井コーチは熱弁する。

 そして、三つ目が自身にプロ初先発の思い出がまったくと言っていいほど残っていないという事実だ。投手コーチとなった今、若い選手たちが自分と同じようなもったいない想いをして欲しくないと考え、環境作りをしている。

「一生に一度のプロ初先発はうれしいもので、記憶に残らないといけないもの。特別なもの。オレみたいに、なにがなんだかわからないようなピッチングになって、なにも覚えていませんでは、あまりにも、もったいない。だから、若い選手がプロ初先発や初登板する状況はしっかりと考えて準備をして送り出してあげるようにしたいといつも思っている」

 だから吉井コーチはいつも選手の初先発や初登板はしっかりとスケジュールを練り上げて、調整をしたうえで送り出すようにしている。佐々木朗希のデビュー戦もしっかりと計算をしながら、入念な準備を重ねて決められた。

吉井コーチと佐々木朗希 ©千葉ロッテマリーンズ