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 実習先の現場を描くというのであれば、すでにいろんな作品があると思うんですが、失踪した後の実態というのは、なかなか知り得ない。既存の報道とか、普通の日常ではコミットできない。そこでしっかりと取材を重ねたうえで、フィクションというか「再現」じゃないですけど、僕の想像も含めた劇映画として、彼女のその後を追いたいと考えました。

 日本で失踪して行き場を失い、生活に困っている外国人は数多く存在しています。そういった人たちを匿って支援するシェルターの役割を果たしているお寺や教会があるので、取材にはそういったところに出向いて、多くの人からお話をうかがいました。失踪した後の具体的な行動や感情、例えば日本で差別された時の気持ちや、日本での稼ぎで国の両親を養わなければいけないプレッシャーなど、細かく描写に組み込みました。

今、日本に来ている技能実習生は、ベトナム人が最多

――今回、主人公をミャンマー人でなく、ベトナム人にしたのはなぜでしょうか? 前作『僕の帰る場所』の縁もあって、監督にはミャンマー人のお知り合いが多いようですが。

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藤元 前作でミャンマー人を取り上げているから、次は別のアジアの国を、と思いました。

映画『海辺の彼女たち』より ©2020 E.x.N K.K. / ever rolling films

――最初にベトナム人が候補になったのは、やはり現在日本に来ている技能実習生に、ベトナム人が最も多いからなんでしょうか?

藤元 それは理由として大きいです。日本では、ベトナム人が失踪した先で、ベトナム人のコミュニティができたりしている。そういった場所があるなら、逃げた先も描きやすいと思いました。

 それで、ベトナムに行ってオーディションをしました。いい女優さんが決まらなければエリアを広げて、別の国の人も候補にあげていくことも考えていました。でも、結果的にいい出会いがあったので、ベトナム人のかたで作品を作ることになったんです。