まだ知られていないベトナム人女優に、リアルな在留外国人を感じて欲しい
――『海辺の彼女たち』はドキュメンタリー作品のような雰囲気がありますが、最初に脚本が完成したのですか?
藤元 最初にある程度プロットやストーリーを組みまして、その後、取材を進めたり、メインの出演者と相談したりして、少しずつ形が変わっていった、という感じです。
――出演者であるベトナム人の女優さんたちにも話を聞かれたんですね。
藤元 そうです。主にパーソナリティーの部分。プライベートなこともインタビューして、キャラクター設定に生かしました。キャラクターというか、もう本人そのままです。役名も本名ですし。彼女たちに備わっている気質そのままでカメラの前に立って欲しい、と話しました。
――演技じゃないものをカメラに収めたい、という感じでしょうか。
藤元 そうですね。半々くらいでしょうか。演技もしてもらわなくちゃいけないんですけど「もし自分が女優ではなく、日本に働きに行くことになったら?」と考えてもらって。パラレルワールドを意識してもらうような感覚です。
――前作同様、メインキャストの中には、初めて演技をしたという出演者もいらっしゃるんですよね。主演のかたはプロの女優さんですか?
藤元 主演の女優、ホアン・フォンさんは、当時すでに1本、中国映画に出演済みでした。『Invisible Love』という作品で、中国映画なんですけど、ベトナムを題材にしています。この作品は、映画祭にかかっていたり、パリ国際映画祭2021では俳優賞を受賞したりしているので、ベトナムでも注目されているらしいです。だから撮影当時は無名だったんですけど、今は結構、彼女に関する記事も出てきていますね。
――ではこれから活躍が期待できそうですね。
藤元 そうですね。ただ、日本ではみなさんまだ彼女をご存知ないから、今回の作品の中では、匿名性があるというか、リアルに存在する外国人女性のように感じてもらえると思います。