ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』(フジテレビ系・毎週土よる11時40分~)で、代名詞ともなった「あざとかわいい」を封印し、主人公ハルコに翻弄される、地味で平凡な編集者兼ライター、菊池いづみ役で新境地を拓いている松本まりか。自らを「雑草」と言い切る松本さんは、「負け続けた18年」の中で何を感じたのか。役者の苦しさと魔力について聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)
(取材・構成/相澤洋美)
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負け続けた18年間
──『最高のオバハン 中島ハルコ』では、38歳独身、弱小出版社の編集者兼フードライター、200万円を貸した10年の付き合いの不倫相手からは5か月も連絡ナシ…という、これまでになく冴えない役柄に挑戦されています。演技で意識されていることはありますか。
松本まりか(以下、松本) これまではキャラクターを作り込むことが多かったんですが、今回は自分のキャラクターを作らず、常に受け身でいるように意識しています。
今回私が演じている平凡なOL「菊池いづみ」は、視聴者さんの「目」なんです。私自身の個性は必要ないので、目立たなくていい。カメラも見切れているくらいでいいし、ピントもなんとなくぼやけているくらいでちょうどいい。ハルコさんが太陽ならいづみはその陰にぼやっといる、みたいな。そんなイメージで演じています。
キャラクターの中ではいづみが一番普通の感覚を持った人ですが、いづみのツッコミが必要なシーンも多いので、そこにはリアクションで応えています。
──SNSでもいづみが少しずつ成長していく姿に多くの共感が集まっています。松本さんはいづみのどんな部分にシンパシーを感じますか。
松本 いづみは弱小出版社のグルメ雑誌で編集者兼ライターをしています。10年間不倫した男にお金を騙し取られそうになるなど、仕事でも恋でもパッとしないアラフォーですが、私自身が負け続けた人生だったので、「人生の勝者じゃない」という部分にすごく共感しています。
負け続けた18年の間に、他人の痛みや自分の至らなさが痛いほどわかるようになりました。だから、いつも弱い人や「勝っていない」人たちにシンパシーを感じます。いづみの中にもそういう血が流れているんじゃないかなと想像して演技しています。