透明感のある美しさと綿飴のような甘い声が魅力の女優・松本まりかは、ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』(フジテレビ系・毎週土よる11時40分~)では、代名詞ともなった「あざとかわいい」や「怪演」を封印。主人公ハルコに翻弄されながら成長していく地味で平凡な編集者兼ライター、菊池いづみ役で新境地を拓いている。
「18年間負け続けた」と自ら語る芸歴の中で、松本さんは何を感じ、何を学んできたのか。恋愛観や結婚観についてもお聞きした。(全2回の1回目。後編を読む)
(取材・構成/相澤洋美)
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人生をひっくり返した「あざとかわいい」という言葉
松本まりか(以下、松本) わ!ダイクロイックのネイルですか?さわっていいですか。(と言ってライターの手を取る松本さん)
まさにこのダイクロイックカラーが、好きなんです。いま引っ越したばかりで、家具を揃えているところで、こういう不思議な色の電球がほしいなと思っていて探してます!
あっ、取材中なのにごめんなさい。つい興奮しちゃいました。
──光栄です。というか、こちらの方がドキドキしました。同性なのに(笑)。松本さんのこういう自然なしぐさや態度が「あざとかわいい」と言われる原因だといま思ったのですが、そう評されることについて正直どう思いますか。
松本 そうなんだ……(笑)。そうですね、私にとって「あざとかわいい」という言葉は、人生をひっくり返すオセロのコマみたいなものだったのかもしれません。
私が初めて「あざとかわいい」という言葉を聞いたのは、2018年のドラマ『ホリデイラブ』で井筒里奈役を演じた時でした。初回放送終了後に、ネットニュースで「あざとかわいい役」と紹介されたのがきっかけで広がったんです。
造語なのか、もともとあった言葉なのかも知りませんでしたが、そもそも「あざとい」ってあまりいい意味で使われませんよね。ネットでも賛否両論だったんですけど、それまで私は誰からも注目されることのない18年間を過ごしてきたので、こんなにも注目されるというのが衝撃でした。
「芸能界にいるのに、誰からも興味を持たれない」って、いかに恐ろしいかわかります? そういう状態が長かったので、「こんなにたくさんの人が興味を持ってくれた」という部分で非常にありがたいと思っていました。
「あざとかわいい」と言われることがうれしかったわけではありませんが、私を形容する言葉として「肩書き」がついたというのは、うれしかったですね。しかもそれが、議論を呼ぶようなテーマで、みんなが私の「肩書き」で盛り上がっているということが私にとっては驚くようなできごとでした。