ブレーキスイッチを持っておくことも必要
内田 『なんで家族を続けるの?』でも触れていますが、中野さんに、情動については父親から受け継ぐ傾向にあると教わりました。私は父の情動の部分を受け継いでいるので、どうしてもカッとしやすいんですね。だからくだらないことでも、カッとなってけんかを吹っ掛けてしまう。だから、「けんかが好き」ってよく言うんですけど、けんかした後に何となく張りつめていたテンションがパッとガス抜きされる、みたいな感覚を私は感じるんです。いいじゃないか、さあ次に行ってみようと思えるようになるんですよね。
でも子どもにしてみれば、自分はお父さんとお母さんの一部分をもらっているかと思うと、その2人がけんかしたりいがみ合ったりして常にテンションが高い状態っていうのは、やっぱりストレスなんですよね、どう考えてもね。
中野 そうなんですよね。30代の方から、「自分自身が両親に似ている部分を見つけて、受け入れづらい」という質問が来ていますね。こちらの話につながりそう。
Q.【30代女性より】私の両親もいわゆる“毒親”の分類に入ります。母親と向き合うのにとても試行錯誤してきましたので、今回の本を楽しく拝読しています。
今回、お2人にお伺いしたいことは、自分自身が両親に似ている部分を見つけたときに、受け入れづらい気持ちになると思いますが、うまく受け入れていくにはどうしたらいいと思いますか? もしくは、変わった親を受け入れるには、どうしたらいいと思いますか?
中野 いやあ、これはそんな簡単には受け入れられないですよ。
内田 そうよね。だからストレスに耐えられなくなったほうから、うまく距離を置いていく。それが子どもであっても、できるならば、そういう距離を置いていくことでしょうか。
中野 そうですね。それから、自分の中に何かスイッチが入ってしまうファクターがあると思うんです。自分の中にうるさいママがまだ棲んでいて、何かきっかけがあるとママが現れる。そのスイッチをなるべく遠ざけておくというのが大事かもしれないですね。あるいは、自分の中にママが現れたときに、「どうどう、どう」って気持ちを静めるようなブレーキスイッチを持っておくことも必要ですよね。不安になると出てくるとか、何かあると思うんですよ。
内田 出やすい環境がね。
中野 そういうときに、「いや、そんな不安じゃないよ」というブレーキスイッチを押す。
内田 自分の中に2人ぐらいいたほうがいいんですね。思い出して「大丈夫だよ」と言い聞かせてくれる自分も棲まわせておく。
中野 そうそう。それはお友だちでもいいし、物語上の人物でも何でもいいんです。私だったら、也哉子さんを一人棲まわせておいて、也哉子さんだったらここでもっと言葉を選ぶなとか思い出して、ブレーキをかけるとか。