内田也哉子さんと中野信子さんの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)の刊行を記念して、4月11日に行われたオンライントークイベント。ZoomウェビナーとYouTubeライブ中継(現在、YouTubeにてアーカイブ動画を公開中)を合わせて1800名超の視聴者を集めたトークの全貌を公開します。(全6回中の3回目。#1#2#4#5#6を読む)

(文:小峰敦子、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

 

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仲直りを見せないとダメ

内田 親子の話が続いたので、ここら辺で夫婦の話にしましょうか。中野さんに質問が来ていますよ。ペンネーム「いちごみるく」さんからです。

Q.【50代女性より】中野信子先生に訊いてみたいことがあります。ついつい子どもたちの前で夫婦げんかをしてしまいますが、親が喧嘩をしている様子を見ると子どもの脳に悪い影響を与えてしまいますか? 円満であることにこしたことはないと思うのですが。

中野 これは端的に言うと、影響を与えます。面前DVと呼ばれるものですね。ただそれよりももっとよくないのは、夫婦喧嘩をした後に仲直りしている場面を見せないことだそうです。これは調査の結果があります。     

内田 あ、仲直りやってません。

中野 あら、ダメダメ。けんかした後にリカバリーできるんだよ、というのを見せてあげる必要があるんだそうです。

内田 一部しか見せていないと、エピソードが完結していないですものね。

中野 そうなんですよ、でも親としては恥ずかしいかもしれませんね。

内田 恥ずかしい。「ごめんなさい」と言っている姿も見せなければいけないなんて。

 

中野 感情的になってけんかした後に、「ちょっと言い過ぎた」とか、「私はいまだにあなたのこういうところを許せないけど、自分も人のことを言えないと思う」とか、そういう姿を見せると、子どもは、「ああ、人間というのは折り合いつけることができるんだ」とわかって安心するんだそうです。

 それでストレスホルモンの値も下がるんです。ストレスホルモンが高いと脳は萎縮するんですよね。だから、けんかしたままの状態に子どもを置いておくのは、子どもにとってはよくないんです。そういう状態の脳のMRIを撮った研究があります。だから夫婦げんかを頻繁にする家庭は、形だけでもいいから仲直りのふりを演じてあげてほしいと思います。

内田 でも中野さん、お言葉ですが、子どもって真偽を見抜く目を持っていますよ。見抜いちゃうんですよ(笑)。何か取り繕おうとしてるだけだな、とかね。

中野 そうか。それでは、家族なんか持たなくていいよと思っちゃうね。

内田 はい。しかも、私は脳が萎縮したまんま育ったんだな。

中野 (笑)いやいや。大人になったら自分で育てられる部分もあるから。