北海道・旭川市で今年3月、市内の公園で亡くなっているのが発見された廣瀬爽彩(さあや、当時14歳)さん。爽彩さんの死の背景にイジメがあったかどうかを再調査するために旭川市教育委員会は5月中旬にも外部有識者による第三者委員会を立ち上げる予定だ。

「文春オンライン」では、教育委員会が選定した第三者委員会のメンバー候補のリストを独自入手。同リストには、爽彩さんがイジメを受けていた時に在籍していた、Y中学校の校長と近しい立場の人物が含まれていた。この人選に遺族側は猛反発している。

※本記事では廣瀬爽彩さんの母親の許可を得た上で、爽彩さんの実名と写真を掲載しています。この件について、母親は「爽彩が14年間、頑張って生きてきた証を1人でも多くの方に知ってほしい。爽彩は簡単に死を選んだわけではありません。名前と写真を出すことで、爽彩がイジメと懸命に闘った現実を多くの人たちに知ってほしい」との強い意向をお持ちでした。編集部も、爽彩さんが受けた卑劣なイジメの実態を可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

4月22日、取材に答える北海道旭川市の西川将人市長(右)と黒蕨真一教育長 ©時事通信

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遺族側は「大学院教授」と「臨床心理士」に反対

 文春オンラインでは4月15日から12本の記事を公開し、爽彩さんの死亡の背景にY中学校の上級生らからの凄惨なイジメがあったことを報じた。その記事が反響を呼び、旭川市にイジメの再調査を求める声が殺到した。

 4月22日、西川将人市長が旭川市の教育長に旭川市教育委員会とY中学校側の対応を改めて調査するよう指示。医師や臨床心理士、弁護士らに委託して、第三者で作る「いじめ防止等対策委員会」を設置し、再調査を開始する方針を示していた。

廣瀬爽彩さん

 爽彩さんの遺族は、爽彩さんへのイジメが行われた2019年4月からY中学校に「娘はイジメられているのではないか」と訴え続けてきた。Y中学校側はその都度不誠実な対応を取り続け、イジメの事実を認めてこなかったが、ようやく行政が重い腰を上げたのだ。

 市の教育委員会は、今年4月末に爽彩さんの事件をイジメがあった疑いがある「重大事態」と認定。第三者委員会による全容の解明に期待が高まりつつあった。

 だが、遺族側は市教委から提示された第三者委員会のメンバーの人選について不信感を募らせているという。旭川市役所関係者が打ち明ける。

「市の教育委員会は5月中旬に第三者委員会のメンバーを決定して、年内には調査結果を公表する予定でしたが、大幅に遅れる可能性が高くなりました。第三者委員会のメンバーは大学院教授を中心に臨床心理士、小児科医、社会福祉士の4名で組織する予定でしたが、事前に遺族側にその人選を伝えたところ、遺族側は大学院教授と臨床心理士が第三者委員会のメンバーに入ることに強く反対したのです」