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2021/05/15

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル, 社会

女へのギャラはせいぜい1万円

 ついにマジックミラー号がその威力を試すときがきた。

 現場を仕切るのはマメゾウ監督、サダージ深野監督だ。向かうは原宿。

 マジックミラー号がソフト・オン・デマンドの倒産を救うことができるのか、企画倒れになるのか。マジックミラー号を路上に止め、ADたちが四方に散り、道行く女性たちに声をかけだした。

 一般女性に声をかけて建物の陰で下着を見せてもらうビデオは前からあるが、マジックミラー号のように特注の車に導き、露出してもらうのははじめての試みだ。

 見ず知らずの車の中に入っていくのは、女性たちにとって抵抗感があるだろうと、困難を予想していたが、意外なことに若い女たちは好奇心の塊なのか、ADの誘いに中まで入ってくるケースがつづいた。

 マジックミラー号の中から通行人が行き交う光景が丸見えで、もしかしたら向こうからもこちらが見えているのではないかと錯覚するほど、遮断された感覚が無い。

 ADに連れられて、マジックミラー号に女子短大生が入ってきた。

 高橋がなりが、彼女を安心させようと、「恐くなったらここから逃げていけるからね」とていねいに説明した。

 どこまで見せてくれるかによって、彼女に支払われるギャラは数千円単位で上がっていく。

 予算に余裕が無いので、脱いだとしてもせいぜい1万円程度なのだが、スタッフの心配をよそに、短大生は恥ずかしそうにしながらもブラジャーまで見せてくれた。

公然猥褻的な状況に女たちはある種の興奮を感じているかのようだ

 背景には原宿の歩行者が見える。

 まるで表参道で公然猥褻をおこなっているかのような感覚に陥る。

 路上に止めてある謎めいた車を不思議そうに見ている男子大学生風の集団がいた。

 短大生の下着姿が歩道から見えるのだろうか。

 彼らのうちのひとりが下着姿の短大生のあたりを先程からずっと凝視している。

 まさか外からうっすらと透けて見えるのだろうか。

 確認のためにマジックミラー号の外に出てみると、外からはまったく見えていない。

 中で脱がせる役は、サダージ深野監督が担当した。

 元慶応ボーイらしく、ソフトな対応で女たちにあたり、ブラジャーを見せてもらった短大生を、上半身露出までもっていくのは容易だった。

 もともと人間には見せたいという願望があるのではないか。

 まるで路上で脱いでいる、公然猥褻的な状況に女たちはある種の興奮を感じているかのようだ。

 最初のうちは車の中まで入りはしても、なかなか脱いでくれる女性がいなかったが、声をかけるADたちが慣れてくるにつれて、増えていった。