コロナ禍で「見知らぬ土地」を旅行する機会はめっきり減ってしまったが、旅先では「どこにトイレがあるか」は切実な問題である。慣れない町を歩く途中で急な腹痛に襲われた際、その存在を近くで見つけて、どんな観光ガイドよりも安心感を覚えたという人もいるはずだ。
そんな「まさかこんなところにも……」と驚くような場所にある「ナゾのトイレ」について、『何度でも行きたい世界のトイレ』(ロンリープラネット編・中島由華訳)より、一部を抜粋して引用する。(全2回の1回目/#2を読む)
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標高2731メートルにあるトイレ
19世紀のイタリアの画家、ジョヴァンニ・セガンティーニは、サンモリッツの山の上の住まいで晩年を過ごし、山岳地方の風景をカンバスに写しとった。標高2731メートルの地点にあるその住まいは、現在はセガンティーニ小屋と呼ばれ、山小屋として利用されている。いかにもスイスらしい外観のこの屋外トイレからは、エンガディン地方の涙を誘うほど美しい谷の眺めを楽しめる。