一度、しつこくハマから「アフター行こうよ」と誘われたことがある。行き先はなんとカジノ。
「ほら、アユミも賭けなよ!」とチップでもくれるのかと思いきや、ハマはひとりでバカラをはじめた。そんなハマの様子を隣で見つめるだけの私。クッソ、帰りてぇ……。
結局、バカラを見つめるだけでこの日は終わった。この日以来、私の中でハマはブラックリスト入り。
「なんか、壁に蛾のような虫がいる……」プノンペンで病む
クセ者だらけかと思いきや、プノンペンは超大金持ちの客もいる。シンガポールで保険会社を経営している大社長とか、某自動車メーカーのお偉いさんなど、客層は幅広い。しかも外国人客も多い。
タダでさえキャストが少ないのに、外国人客に何時間も付いていたらそりゃ疲れる。私の翌日に入店した22歳のユウカちゃんは、私よりも英語が喋れなかった。ひとりで外国人客に2時間も付かせられ、ひたすらニコニコするしかなかったという。
そしてオーナーの方針なのかは知らないが、客が居続ける限りは営業するスタイル。一応、残業代は出るけど、この国に風営法なんてものはない。さすがカンボジア!
とはいえ店は一応、深夜2時までの営業となっている。自分が接客していた客が帰れば、早上がりもできるのだが……。店の上に寮があるので店内でカラオケをしようものなら、部屋までガンガン聞こえてくるのだ。
「テメェ!!」
「なんだ!? コノヤロー!!」
仕事を終えて部屋で寝ていると、下からコントのような怒号が聞こえてくる。時刻は朝の4時。
「ウルセーぞ!! コルァ!!」
床ドンしたら収まったが、マジで朝っぱらから迷惑な客どもだ。
こんな生活をしているので、身体的に病むまでに時間はかからなかった……。一度寝ると死んだように眠ってしまう。
「なんか、壁に蛾のような虫がいる……」
部屋の壁に張り付いた大きな虫。気持ち悪いけど動いたら嫌だな、と思いつつその日は爆睡した。翌朝も、その次の日も虫は動く気配がない。しばらくして気づいたのだが、よく見るとそれは壁の一部が剥がれていて中のコンクリートが見えているだけだった。どうやら幻覚が見えるほど疲れていたらしい。
「仕事したくねーなぁ……」
イオンの近くのスラム街を眺めながら、貝料理をツマミにビールを飲む。仕事前の唯一の至福の時間。
「プノンペンの貝は川の水銀まみれだから病気になるよ!」
客からの厳しいツッコミ。
あれ、私の人生もうちょっと楽しくてもいいんじゃない?
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