1ページ目から読む
3/4ページ目

得意の料理で始まったネットの副業。しかし…

 ココナラで仕事を始める前まで、けんちゃんママは病院の受付事務のパートとして働いていた。子供が大きくなるにつれて時間に拘束される仕事が難しくなり、在宅で自由に仕事ができるネットの副業に興味を持ち始めた。

 しかし、フリマアプリやブログを書く仕事では思うように稼げず、悩んでいたところ自分のスキルを販売する「ココナラ」と出会った。

 料理が得意だったけんちゃんママは、早速、『体育会男子高校生時短弁当の作り方』というサービスを、テキスト動画にまとめて出品した。だが、売れたのは総額1万3000円ぐらい。思うように収入を得ることはできなかった。

ADVERTISEMENT

 なんの特技もない自分がココナラで稼ぐ方法はあるのか。他の人の仕事を見ていたところ「電話相談」というサービスにたどり着いた。

「カウンセラーでもない私が、他人の相談なんか受けてもいいのかという不安はありました。話を聞くことがうまい人なんて、世の中にたくさんいますから」

 不安だらけで始めた最初の電話相談は今でも覚えているという。話がまったく噛み合わず、相談にもうまく乗れなかった。自分は人の話を聞く才能はないと激しく落ち込んだ。

「相談する人の悩み事の答え」のありか

 しかし、不慣れながらも人の悩みと向き合い、一生懸命、話を聞いているうちに、少しずつコツが分かってきた。

「相談する人の悩み事の答えは、すでにその人の中で出ているケースがほとんどなんです。受け入れて欲しい、癒やされたい、承認して欲しいという思いがあるから、悩みを他人である私に相談しているんです。だから、何を相談されても、正論やアドバイスを言わないようにしています。その人の気持ちに共感してあげることが、相談する人が一番求めていることなんです」

 けんちゃんママは、「今、この人が求めている言葉は何だろう?」と常に頭の中で考えながら相談を受ける。ノートにメモを取りながら、話の全体像を掴んだ上で相談の受け答えをする。びっしりと悩み事が書き込まれたノートは、5月で9冊目に突入した。

けんちゃんママ

副業で出会えた「感動」

 けんちゃんママに電話相談のやりがいを聞いてみた。

「収入面のやりがいはもちろんあります。でも、それ以上に人に感謝されることが、この副業の最大の魅力だと思っています」

 主婦の仕事として家事、掃除、洗濯を日々こなすが、それらを通じて「ありがとう」と言われることはない。母として妻として当たり前だと理解しながらも、心のどこかで淋しいという思いをけんちゃんママはずっと抱えていた。

 そんな自分が、電話相談で見ず知らずの人から「ありがとう」と言われ、時には泣きながら感謝の言葉を述べられる。今までの生活では体験することができなかった感動がそこにはあった。

「世の中にはお金をもらえる副業がたくさんあります。でも、人から感謝される副業はそんなに多くありません。自分の存在意義を感じられるこの仕事は、一度体験してしまうと止められなくなりますよ」