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けんちゃんママの「副業のその先」

 今、けんちゃんママが取り組んでいることが2つある。

 ひとつは、ココナラで電話相談の副業をはじめたい人への支援だ。一般の人からの電話相談の他に、副業で稼ぎたい人に対して、コツやアドバイスを電話で教えている。しかし、ノウハウを教えることは、自分のライバルが増えることにもなる。

「何も才能がなかった私が、これだけ楽しい副業に巡り合うことができたんです。きっと誰でもできる仕事だと思うし、多くの人にいろいろな出会いや体験が生まれるほうが、世の中のためになると思ったんです」

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 もうひとつ、副業を通じて取り組むのが、フィリピンのセブ島のスラム街への支援だ。昔から海外の貧困層への支援に興味があったが、時間とお金がなくて行動に移すことはできなかった。

 しかし、ココナラの電話相談で稼げるようになり、ボランティア活動の夢を叶えることができるようになった。

「セブ島のスラム街に行って、貧困層の子供たちを目の当たりにしてきました。今はココナラの売上の一部を寄付にあてていて、いつか、電話相談をしてくださった人たちと一緒に、フィリピンの子供たちに支援ができるような事業が始められればと思っています」

セブ島ボランティア写真

 悩みの相談を受けて、そこで稼いだお金を今度は貧困で悩む子供たちを救うために使う。けんちゃんママの悩み事の支援サイクルは、小さいながらも少しずつ回り始めている。

「けんちゃんママの悩み」は誰が聞く?

 最後にけんちゃんママ自身は誰かに相談しないのかと聞いてみた。しばらく考えた後に「あまりないですね」と言葉が返ってきた。

「電話相談を長くやっているとストレスをうまくかわすやり方を覚えてくるんです。それに、こんなに長く電話相談を続けられるということは、人の悩みを聞くのが本当に好きなんだと思います。この仕事にやりがいを感じているし、誇りも持っているから、大きなストレスを感じることはあまりないですね」

悩みを聞いてもらえる場所

 取材する前まで、電話相談の副業に対して「本当に稼げるのか?」という思いがあった。しかし、悩み事が複雑に入り組むこの時代に、誰かに相談したいというニーズは増えているはずである。

 特にコロナ禍で人との接触が絶たれたことで、不満や辛さを心の中に閉じ込めてしまう人は多い。自分自身の存在意義が分からなくなり、心の中で悲鳴を上げている人はたくさんいるに違いない。

 それならば、心理カウンセラーや精神科の医師に相談すればいいと思っていたが、いざ自分の立場で考えてみると、それも難しいことが分かった。

 専門家に相談することで「自分が何かしらの病気なのではないか」とは思い込んでもイヤだし、仮に相談しても、「カウンセラーだから」「話を聞くプロだから」と思って、素直に専門家の話が聞けなくなってしまう。

「人の悩みを聞く」というマーケットは改めて大きいと思った。しかし、ちょうどいいさじ加減のサービスが今まで存在していなかった。そこにけんちゃんママのような電話相談のプロが現れて、悩み事を相談するサービスの市場を急拡大させた。

 格差社会や差別、家庭問題など、息苦しい問題が世の中に増えれば増えるほど、心の隙間を埋める「普通の人の電話相談」という新しい副業は、世の中に浸透していくのではないだろうか。

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写真=けんちゃんママ提供

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