「太り過ぎは個人の責任」と言われるが、本当だろうか。ダイエットは必ず太りやすい体質を作り、ヘルシーな食品にはタバコやアルコール並みの中毒性がある。しかし、食品業界もダイエット業界も、その事実には口をつぐんでいる。

 人々を薬漬けにした製薬企業や、スマホの買い替えサイクルなど、私たちの生活を変えたさまざまな“企業の判断”について、英BBCのジャーナリストが明かした書籍が、『世界を変えた14の密約』(文春文庫)だ。同書より、”ダイエット”をめぐる恐るべき企業のカラクリについて、訳者の関美和氏が解説した記事を再公開する。(初出:2018年6月5日。日付、年齢、肩書きは当時のまま)

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わたしたち現代人は本当に太り過ぎなのか

 大企業に勤めるわたしの知人で、年1回の健康診断の直前に2日間絶食している男性がいる。わたしから見ると、平均的な体格で、決して太り過ぎの分類には入らない。それなのに数年前に健康診断でメタボ認定を受けてしまったと言う。たしかに、2008年にメタボ検診が義務化されてからは、わたしの周りでも体脂肪やBMIが話題になることが増えた。でも、わたしたち現代人は本当に太り過ぎなのだろうか? 昔よりスマートになっているように見えるのに? 

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 答えはイエスだ。本書によると、イギリス人の平均体重は1960年代より19・5キロも重くなっている。アメリカ人の肥満率は75パーセントと言われる。日本でも肥満人口は増加の一途をたどり、今や2300万人に達したと推計されている。

 ではいつごろからなぜそうなったのか? これほどダイエット産業が成長し、いわゆるローカロリーの食品がスーパーの棚を埋め尽くしているのに、どうして肥満は減らないどころか、増え続けているのだろう?