首相、気色ばむ問題
さて、選挙戦では「ファクトチェック」という言葉もよく登場する。話題となったのは首相のこの発言だった。
《「ぜひ国民の皆さんに、新聞をよくファクトチェックしていただきたい」》(毎日新聞 10月9日)
何かといえば、《8日の党首討論会では、安倍晋三首相が衆院解散の判断に至った要因の一つとされる森友学園・加計学園の問題も取り上げられ、首相が気色ばんで朝日新聞を批判する場面があった。》というのだ。
《応答で首相は7月10日の加計問題に関する国会の閉会中審査に言及。参考人で出席した加戸守行・前愛媛県知事の発言を「次の日に全く(朝日が報道)していない」と続け、「胸を張ってしていると言えますか」と聞いた。「はい、できます」と応じられると、首相が「チェック」を呼びかけた。》
この模様は2紙の表現が共通。
「気色ばむ首相、朝日批判 加計問題で応酬」(毎日新聞)
「首相 気色ばむ 朝日の加計報道を批判」(東京新聞)
気色ばむ!
朝日をめぐり、東京・毎日・産経が参戦という構図
肝心の朝日新聞は9日の紙面で、
《加戸氏については、閉会中審査が開かれた翌日の7月11日と25日付の朝刊で、国会でのやりとりの詳細を伝える記事で見出しを立てて報じたり、総合2面の「時時刻刻」の中で発言を引用したりしている。》
と応えた。
他紙も同日、
《朝日新聞は七月十日の閉会中審査翌日、東京本社発行の朝刊で審査のやりとり詳報を掲載。》(東京新聞)
《朝日新聞は7月11日付の朝刊に審議の詳報を載せ、「愛媛は12年間加計ありき」の見出しで加戸氏の発言を掲載した。》(毎日新聞)
「ぜひ国民の皆さんに、新聞をよくファクトチェックしていただきたい」という首相の願望はこうして検証された。
では首相がなぜこれだけアツかったのか? 産経新聞が参考になる。
《7月11日付の朝日新聞と毎日新聞の朝刊は、加計学園誘致を進めた当事者である加戸氏の証言について、一般記事中で一行も取り上げず、審査の詳報の中でごく短く触れただけだった。》(産経新聞 10月9日)
つまり一般記事中で一行も取り上げてないじゃないかと。「手続きに問題はない」という主張を「もっと書け」という産経の意見。首相はこの論調にのったのだろう。
この応酬、スポーツ新聞の見出しになるなら「もっと書け、もっと加計、激突!」だと思って楽しみにしていたのですが、このダジャレはありませんでした。
ファクトチェックもダジャレチェックも重要です。