「人物像をつかめないまま演じたのは、実は初めての経験です」
ダー子熱にやられた連中を急速冷凍させたのが、育児放棄するシングルマザーの三隅秋子を演じた『MOTHER マザー』(20)。観ていて嫌悪感しか抱けない役柄は、ショッキングであると同時にまた新たなフェーズに進んだのだと思い知らされた。長澤自身も秋子の行動がどうにも理解できず、キャラクターではなく物語に寄り添うことに。感情のままに生きていると落ちるとこまで落ちることを物語が訴えていると解釈し、場面ごとに秋子の感情を探ったという。「人物像をつかめないまま演じたのは、実は初めての経験です」(※7)と語っているが、そこから新たな演技のアプローチを掴んだのではないだろうか。
ダー子と秋子。この振り幅の凄まじさに呆気にとられたが、本人も「どんどん、どう見られているかわからなくなっていて(笑)」(※8)と、ここ数年の目まぐるしい変貌に戸惑っているようだ。
「お互い男女の関係に踏み込めないというのも一つの愛」
今春、『コンフィデンスマンJP 英雄編』の撮影が行われていたというが、かつて東出演じるボクちゃんとダー子の関係性について「ボクちゃんの思いにダー子が応えることは、これからの未来、あるのでしょうか?」と問われると、
「いや、ないでしょう(笑)。恋愛感情もないんじゃないかな。スタッフさんの中には“あるんじゃない?”という人もいますが、私はないと思います。だって今さら恥ずかしくないですか!? 散々好き勝手やっておいて、今さら実は好きだなんて、嘘っぽくて白々しい。(中略)お互い男女の関係に踏み込めないというのも一つの愛であり、その象徴という感じがします」(※6)と話していた長澤。
『ドラゴン桜』は今期放送中のドラマでも高視聴率をキープ、今年8月には長澤のデビュー20周年を記念した写真集の発売も決定している。なにかの型にはまる前に、その型を壊して次へと進む、そうした彼女の俳優道に今後も驚き、唸りたい。
※1 『Quick Japan』Vol.67(2006年8月)
※2 『ピクトアップ』2003年10月号
※3 『婦人公論』2012年7月22日号
※4 『Amebaスペシャルインタビュー Blog by Ameba』FILE19
※5 『週刊文春』2011年7月14日号
※6 『テレビブロス』2019年7月号
※7 『婦人公論』2020年7月14日号
※8 『ピクトアップ』2019年6月号