くすぶってこじらせている役をずーっと演じてほしいんだけど
まずは、産婦人科医療の厳しい現実を描いた『コウノドリ』(2015年・2017年、TBS)だ。
星野が演じるのは患者にも医師にも厳しく冷徹な産科医・四宮ハルキ。1ミリも笑わない無愛想の背景には、自分を戒めている贖罪の念がある。
5年前の四宮は喫煙妊婦を厳しく叱ることもできない優しい笑顔の産科医だった。ところが、その妊婦が早期胎盤剥離を起こし、大量出血で亡くなる。子供は重度の脳性麻痺で今も入院中。喫煙を禁じることも命を救うこともできず、この家族を不幸にしたと自分を責め続けて、時々悪夢をみるほどのトラウマも抱えている。
また、『MIU404』(2020年・TBS)では機動捜査隊の刑事・志摩一未役。常に冷静沈着、やんちゃで甘えん坊な相棒(綾野剛)とはやや距離を置いて任務をこなす。距離を置くのは、証拠を捏造して警察を辞めた相棒(村上虹郎)の死に、責任を感じているからだ。警察内部でも疑いの目で見られ、時には罵声も浴びせられるが、決して多くを語らず、心の奥で深く悔やんでいるという役どころ。
そして、映画『罪の声』(2020年)では、子供の頃の自分の声が世間を揺るがした未解決事件に悪用された主人公。31年前、複数の大手企業が脅迫・恐喝された事件だが、いずれも未遂に終わり、金も人命も奪われていない。それでも親族が罪を犯したかもしれないという疑念、現在の幸せが壊れるかもしれない恐怖、そして知らなかったことで別の罪悪感に苛まれる難役だった。以上が星野源「罪悪感三部作」。
要するに、ここ最近の星野源は「罪悪感が重量級の主演俳優」なのだ。童貞で陰キャからの大躍進。もう変なあだ名で呼ばれて馬鹿にされることもなく、何ならちょっと二枚目風な空気も醸し出すようになって。
個人的には、老いてもなおくすぶってこじらせている役をずーっと演じてほしいんだけどな。ということで、結婚後の出演作に過剰な期待を寄せて、お祝いの言葉に代えさせていただきます。