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本当にこれが19歳のピッチャーか! 元オリックス・野田浩司が見た宮城大弥

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/06/19
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先発投手に完投・完封の景色を見せてあげたい

 さてここからは、昨今のプロ野球の投手事情について、私が気になってきている事を述べさせていただきたい。先発投手の投球回数が年々減ってきている事、逆にリリーフ投手の登板数が増えてきている事だ。

 先発投手の球数が100球強で交代という考えが完全に定着した事が理由だと思うが、一昨年(昨年度はコロナの影響で試合減)の数字を見ると、規定投球回(=試合数)到達者は、両リーグで15人。逆に60試合以上登板した人数は両リーグで21人、50試合以上でみると48人もいる。

 この中にはこの登板数を複数年続けている投手も当然いて、リリーフ投手の中には勤続疲労で年々少しずつボールの切れが落ちてきている投手、あるいは故障してしまった投手、どのチームにも見受けられるのではないだろうか。

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 先発投手の場合はほとんどが中6日空けての登板である。少々球数が増えたとしても6日空けば次回の登板に疲れが残ることもなく、万全の状態でのぞめるだろう。

 昔の話をすると笑われるかもしれないが、私達の時代はチームの勝利は勿論の事だが、自らの勝利にも強くこだわったように思う。常に完投を意識して先発のマウンドに上がり、試合の中盤以降に疲れがきて交代を告げられる場合も、リードしているケースでは納得してマウンドを降りたが、同点、あるいは1点負けぐらいで降りる場合は、ほとんどの場合、まだ投げさせて欲しいと思ったものである。

現役時代の筆者・野田浩司 ©文藝春秋

 こんな事もあった。同点で代えられる試合が数試合続いた時、ゲーム後監督室に直行し「納得いきません」と言った。絶対やってはいけない行為だと思うが、調子も良く余力も充分、後々冷静に考えれば、リリーフとの兼ね合いでの交代だと分かるのだが、自分に自信もあった時、リリーフに代わるよりも自分の方が抑える可能性が高いと思っての行動だったと思う。

 ただし、今書いてきた事も投球数への概念がそれほどなかった時代だからの話である。

 もし今の時代に置き換えるとするなら、球数で割り切る事が出来るので、同点で交代でもチームが勝てば良し、クオリティースタート(6回3失点以内)は出来たと割り切れるのであろう。(ちなみに監督室に行った試合のチームの勝敗は記憶にない(笑))

 完投数にしても激減してしまっているが、ゲーム展開に余裕があったり、先発投手に余力がある時には、完投・完封の景色を見せてあげてはどうだろうか。

 リリーフ投手の負担軽減にもなるし、経験の浅いピッチャーにとっては1人で投げきったという事が、自信となって大きな成長に繋がることもある。

 なにより時代は変わっても、リリーフの助けを借りて勝った時より、1人で投げきって勝った時の方が嬉しいに決まっている。

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