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 映画『花束みたいな恋をした』が大ヒットした坂元裕二脚本で話題の『大豆田とわ子と三人の元夫』の主人公・とわ子は経済的にも自立している。

 会社の社長で、広いアイランドキッチンのあるおしゃれなマンションに住み、ウォークインクローゼットの中で素敵な服をとっかえひっかえして、しょっちゅう知人と飲み食いしているので陰キャには見えないが、亡くなった母親の納骨がなかなかできなったり、親友・かごめ(市川実日子)がふいに亡くなると1年間、立ち直れずにいた。

『ドラゴン桜』『イチケイ〜』との違い

 これらの主人公の共通点は瞳に覇気がないことである。たいていドラマの主人公は瞳が明るく輝き、前を向いている。リモートワークで一般人も使うようになった明るいライト(のもっと高性能なもの)を顔に受け、瞳の中に星があるように見えるものなのである。

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 例えば、日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系 日曜9時~)や月9『イチケイのカラス』(フジテレビ系 月曜よる9時~)、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 日曜よる8時~)では、主人公の瞳が自信や希望、真実の探究心に満ちて強く輝いている。これが一般的なエンタメの主人公である。

大河ドラマ『青天を衝け』(公式HPより)

 主人公ではないが主要人物である『青天』の慶喜(草彅剛)は「私は輝きが過ぎるのだ」と悩んでいるくらいで、悩んでいるけれど照明は当たりまくり、瞳はここぞという時、キランと輝いている。

瞳が輝くと視聴率は上がる?

 ところが、『モネ』、『コント』、『とわ子』では瞳をあえて煌めかせ過ぎないようにしているのではないかと思えるほど、主人公たちは伏し目がちに見える。その証拠に『コント』の中浜はようやく再就職をする決意をして、美容院に行ったり面接用のスーツを買ったりしたとき、瞳に光が入って輝きはじめる。

 瞳に光が入るのと入ってないのでは、印象がまるで違うことをリモートワークで実感した人も多いのではないだろうか。ドラマでも瞳の明かりの影響力は絶大で、観る者にもそのキラキラが力を与えて来た。世帯視聴率がそれなりに高いドラマは主人公がまっすぐ明るい瞳をしている。

『コント』も中浜の目に光が入った回の翌週は視聴率が上がった(第8回)。人は主人公の明るく強い視線に惹かれやすい。にもかかわらず、なぜ、陰キャが主人公で、簡単にすっきりと答えの出ないドラマが増えたのであろうか。