3時間もとられる、ではなくて3時間も野球を楽しめる、なのだ
そうだ、ヤクルトにホーナーという助っ人が鮮烈デビューをしたのも覚えている。すんごいスイングでぽんぽんホームランを叩きこんでいたのだが、あまりに簡単に打っているように見えるため「腕だけの力であそこまで持って行けるとは」とアナウンサーが驚き、アニメスタジオでテレビを観ているこちら数人も頷いていたら解説の川上哲治氏が「はっ、何いってんの、腰からまわってるでしょうが!」「腕だけなんてとんでもない、どこ見てんだ」と一喝。スローモーションで見たらその通り、腕だけで打ってるように見えるほどの速度で先に腰がはいっていた。漫画か! きみ!
選手ひとりひとりの動きにすべて意味があり、試合の中に美しく配置される野球。エラーもね、そこでそれでそこか!となるのだ。
そしてひとりでなくチームでやるスポーツだから3時間の試合はドラマでつながっているわけです。例のデッドボールも数打席前から若い投手が投げ切れないインコースばかり要求する相手捕手に気づいていれば別のシーンに見えてくる。去年まで同じチームの仲間だった選手が敵チームにいるせつなさ。カープ戦にばかすか打つし。コーチも移動してるよ、データ持ってるからこわいなあ。人工芝張り替えたから球の跳ね方が違うねえ。優勝からいま一番遠ざかっているかのチームの好調さ、続くのかどきどきする。バットコントロールがええんじゃのうて悪球打ちなだけでは。キャノンがどうこう言う前に走るのへたすぎ問題。マツダのうどんとおにぎり美味しい。数年前、神宮初参戦したアシスタントさんがウインナメガ盛りを買ってしまい「食べても食べてもウインナが減りません」というLINEをくれたことも忘れられず。3時間は雑味であふれているからこそ楽しい。
3時間もとられる、ではなくて3時間も野球を楽しめる、なのだ。
とられません、ひたれます。
映画館の椅子に座るときには「長いなあ2時間」という気持ちは飛び「ああこれから2時間映画にはいれるんだ」と変換されるのと同じだ。
件の長女も『シン・エヴァンゲリオン』(2時間35分)は2度映画館に足を運んでいる。熱く感想を友達と語っていたりもする。その2時間35分は長くないのね。わかる。
ほら、テレビ録画はコマーシャルをとばして本編だけ観るけど、かなりあとになって観返した時「わ、このコマーシャルなつかしい!」「わ、あの番宣はいってた」とそこにある余分が嬉しかったりするではないか。娯楽はカロリー、カロリーは正義。余白余分余裕に甘みはあるのだ。
どうか3時間一緒に野球を味わって下さい… ませんかっ!?(通訳クレートさん風に)
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