交流戦優勝。パ・リーグ最速の40勝到達。2位と3.5ゲーム差の単独首位。貯金10(7月5日現在)。

「元々の実力は高かった」等と評論家は口にするがそんな訳はない。最下位だった昨年と比べて補強と言えるのは平野佳寿、能見篤史、ステフェン・ロメロくらい。それでいて昨年の今頃と余りに極端なこのチーム状況。我々オリックスファンはコロナ禍に突然訪れたこの野球バブルにどうしていいのか未だ手探り状態である。

 何よりチーム打率がパ・リーグ首位の.256、本塁打も首位タイの76本(共に7月5日現在)。ついに投手王国の大政奉還か、守り勝つ野球のイノベーションか。思えば交流戦最初のカード、横浜DeNAとの乱打戦から潮目が変わったように感じるのは自分だけだろうか。まるで自分の世代(1975年生まれ)の夏の風物詩だった「優しいジャイアン」と「勇敢に戦えるのび太」ののび太を見ているような、少しうっとりした「両手をシスター組みしたしずかちゃん」のような面持ちで後半戦を迎えようとしている。

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 この躍進の原動力は何だろう。自分が思うにそれは「両翼が両翼として機能し始めた事」ではないだろうか。ある意味でオリックス・バファローズはいよいよその翼を広げ大空に羽ばたこうとしていると言えるだろう。

センターラインだけでは語れない野球の形

「やっぱ野球はセンターラインやで!」

 野球好きが集まれば必ずと言って良い程耳にするこのワード。「史上最強のアイドルは松田聖子」とか「史上最高のバンドはビートルズ」くらいに聞き飽きた言葉だろう。そもそも野球のセンターラインとは投手・捕手・二塁手・遊撃手・中堅手を総じて表す言葉であり、見たままダイヤモンドの中心を守るポジションの事だ。

 ラグビーやサッカーと比較してオフェンスとディフェンスの機会がハッキリと仕切られている野球の場合、ディフェンスだけの話をするならば確かにここらのポジションに名手を配置すれば失点しにくくなるだろう。加えてこのポジションにずば抜けて得点力の高い選手が存在するのがプロの世界。大谷翔平(投手・ロサンゼルス)は規格外の別格としても、柳田悠岐(中堅手・福岡ソフトバンク)に坂本勇人(遊撃手・読売巨人)、山田哲人(二塁手・東京ヤクルト)等はその最もたる例だろう。「リンゴ・スターはドラムなのに歌も上手い」的な話で、そうなると俄然勝利に直結しやすい。やはり過去から野球に於いては、センターラインが最重要視されて来た事に間違いはないのだろう。

 しかし、近代野球に於いては少し様相が変わって来たとも言える。言わば最初に触れた「両翼」、一塁手・三塁手・右翼手・左翼手の存在ががより一層大きくなって来たのだ。本来の「攻撃的ポジション」のここに名手を配置する事が勝利への鍵となって来た。そして実は、12球団で今、一番この「両翼」の層が厚いのがオリックス・バファローズと言えるのではないか。